約338億光年かなたの銀河「JADES-GS-z14-0」を発見 観測史上最も遠い銀河

AI要約

宇宙に存在する無数の銀河の誕生時期や大きさの謎を解明するために、最も遠い銀河「JADES-GS-z14-0」と「JADES-GS-z14-1」がJWSTによって発見されました。

これらの遠方の銀河の観測には赤方偏移の影響があり、それを考慮した共動距離で表されています。ウェッブ宇宙望遠鏡による観測から、遠い時代の銀河が数百個も検出されています。

距離の正確性を確認するために、赤方偏移以外の性質も詳細に調査され、過去には誤認された天体もあることが明らかになっています。

約338億光年かなたの銀河「JADES-GS-z14-0」を発見 観測史上最も遠い銀河

宇宙に無数に存在する「銀河」がいつ頃誕生したのかはよく分かっていません。初期の宇宙に存在する銀河の数や大きさは、宇宙がどのように誕生し進化したのかを探る上での基礎的な情報となります。

ピサ高等師範学校のStefano Carniani氏を筆頭著者とする国際研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope: JWST)」の観測によって、観測史上最も遠い銀河「JADES-GS-z14-0」と、2番目に遠い銀河「JADES-GS-z14-1」を発見したと報告しました(※1)。特に、JADES-GS-z14-0はその距離にも関わらず非常に明るい銀河であるため、宇宙における銀河の形成過程を見直す必要があるかもしれません(※2)。

※1…この記事における天体の距離は、光が進んだ宇宙空間が、宇宙の膨張によって引き延ばされたことを考慮した「共動距離」での値です。これに対し、光が進んだ時間を単純に掛け算したものは「光行距離(または光路距離)」と呼ばれます。また、2つの距離の表し方が存在することによる混乱や、距離計算に必要な定数にも様々な値が存在するため、論文内で遠方の天体の距離や存在した時代を表すには一般的に「赤方偏移(記号z)」が使用されます。

※2…この記事で解説している研究内容は、特定の科学誌に論文が掲載される前のプレプリントに基づいています。正式な論文が投稿された場合、解説内容と論文の内容にズレが生じる可能性があります。

現在の宇宙には恒星が無数に存在していて、その恒星が集団となった「銀河」もまた無数に存在します。銀河は物質が高密度に集合して恒星が多数誕生する現場となっていて、また寿命を迎えた恒星からは重元素が拡散することから、銀河は惑星や生命の誕生にも間接的ながら重要な役割を果たしていると言えます。

では、銀河は宇宙誕生後どの段階で誕生・進化したのでしょうか? 遠方にある初期の銀河からの光は非常に暗くなる上に、赤方偏移の影響で赤外線にまで引き伸ばされています。捉えるだけでも困難なこの光を捉える能力に長けているのが、2022年から本格的な観測を開始したウェッブ宇宙望遠鏡です。

実際、ウェッブ宇宙望遠鏡は観測開始の初年度に宇宙誕生から約6億5000万年以内の時代に存在したと見られている銀河を数百個発見しています。その中には今回の研究成果が発表されるまで観測史上最も遠い銀河だった「JADES-GS-z13-0」も含まれています。

ただし、見た目には赤方偏移の強い銀河であるように見えても、実際にはもっと近い距離にある天体を誤認している可能性があります。距離が正しいかどうかは赤方偏移以外の性質を詳細に調べる必要があり、大幅に間違った推定をしていたことがその作業の過程で発覚した天体もあります。例えば「CEERS-93316」という天体は、2022年7月の発見当初は観測史上最も遠い天体として発表されましたが、2023年5月になって、実際にはその後の作業過程でずっと近い天体であることが発表されています(いずれもプレプリントの日付)。