声量の低下やかすれなど、声の老化は健康や生活の質にも影響、治療法や自分でできるケアは

AI要約

加齢に伴い声が変化する理由として、声帯の細胞構成の変化や呼吸能力の低下、筋肉の緊張、姿勢の変化などが挙げられる。

高齢者の約3人に1人が発声障害を経験し、声量の低下や声がれ、声をコントロールする力の低下などが一般的な症状である。

高齢者の声に対する社会的な見方には、知恵や優れた話術を結びつける意見と否定的な意味づけをする傾向があり、固定概念が高齢者の能力評価に影響している。

声量の低下やかすれなど、声の老化は健康や生活の質にも影響、治療法や自分でできるケアは

 年齢とともに、自分の声が変わってきたと感じている人はいないだろうか。声の変化は高齢に近づくにつれて多くの人に起こるものだが、声が円熟味を増してやわらかくなる人もいれば、声が震えたり、ささやき声になったり、話すのに苦労するようになったりする人もいる。加齢に伴い声が変化する理由と、医師に相談すべき場合やタイミングについて解説する。

 年齢を重ねると、筋肉量の減少や姿勢の変化により、以前は簡単に出せていた声を同じように出すのが難しくなることがある。歌手を生業とする人たちからは、声が低くなったり、震えたりするようになるとの報告が聞かれる。

 声も小さくなり、嚥下(えんげ、飲み込み)障害や、パーキンソン病などの神経疾患を患っている人たちでは特にその傾向が強くなる。声帯と呼ばれる、振動することで声を作り出す複雑な器官が張りと弾力性を失い、湾曲したり、委縮したり、隙間が生まれたりすることによって、声のトーンに影響を与える。

「声帯の細胞の構成も変化します」と、米ワイルコーネル医科大学の言語聴覚士、ジェームズ・カーティス氏は言う。そうした細胞の変化が、呼吸能力の低下、筋肉の緊張や姿勢の変化と相まって、「息の音が混じったり、粗かったり、張り詰めていたり、ガラガラしたりしていない滑らかな声を出す能力に重大な影響を与えるのです」

 声帯は声を出すのに不可欠だが、「老けた」声の元凶が常に声帯にあるとは限らない。実際には、加齢に伴うさまざまな体の変化が、声にもダメージを与えている。

 そう考えると、最大で高齢者の3人に1人が発声障害を経験していると推定されるのも、驚くにはあたらないだろう。症状は人によってさまざまだが、最も一般的なものとしては、声量の低下、声のかすれや声がれ、声をコントロールする力の低下などがある。

 こうした変化は通常、ゆっくりと起こり、早い人では50代で「加齢性音声障害」が始まる。すべての人が加齢に伴う声の変化を経験するわけではないが、変化がある場合には、本人をはじめ、周囲の友人知人、子どもたちもそれと気づく。

 2014年1月に学術誌「Journal of Language and Social Psychology」に発表された研究で示されているように、近年は、人は高齢者の声を知恵や優れた話術と結びつける傾向があることが示唆されている一方、高齢者の声に否定的な意味づけをする傾向も根強い。年老いた声が柔軟性や説得力に欠ける証拠とみなされるとする報告もあり、このことは高齢者の能力や真価に対する古くからの固定観念を助長すると指摘されている。