まるで「ガラスの天板」…あまりにも「予想外」過ぎた「台風」の「真実の姿」

AI要約

大気の流れや気象現象の原動力である太陽エネルギーについて解説。

対流圏、成層圏、中間圏、熱圏という大気の層について説明。

オゾン層の働きや各層の特徴について詳細に説明。

まるで「ガラスの天板」…あまりにも「予想外」過ぎた「台風」の「真実の姿」

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「謎解き・海洋と大気の物理」、「謎解き・津波と波浪の物理」で知られるサイエンスライター保坂直紀氏による『地球規模の気象学』。

風、雲、雨、雪、台風、寒波……。すべての気象現象は大気が動くことで起こる。その原動力は、太陽から降り注ぐ巨大なエネルギーだ。

赤道地域に過剰に供給された太陽エネルギーは大気を暖め、暖められた大気は対流や波動によって高緯度地域にエネルギーを運ぶ。

ハドレー循環やフェレル循環、偏西風が、この巨大な大気の大循環の中心を形作る。大気の大循環を理解すれば、気象学の理解がより深まるはずだ。*本記事は、保坂 直紀『地球規模の気象学』(講談社ブルーバックス)を抜粋、編集したものです。

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 いま説明してきた大気の流れは、地上から高度十数キロメートルくらいまでの「対流圏」で起きている現象だ。地球の大気は、対流圏を含むいくつかの層に分かれている。その話をしておこう(図1─3)。

 山のふもとより頂上のほうが寒い。高く上れば気温は下がる。これは、わたしたちが暮らす「対流圏」の感覚だ。対流圏は、地上から高度十数キロメートルまでの大気の層だ。高度1キロメートルにつき気温は約6・5度Cずつ下がる。対流圏の上端ではマイナス60~マイナス50度Cになっている。

 対流圏の大気を暖める主要な熱源は地面だ。太陽からくるエネルギーのうち2割は大気や雲に吸収されるが、全体の半分は地面に吸収される。それだけでなく、いったんは大気や雲に吸収されたエネルギーも赤外線として再放出され、これも地面を温める。こうして温まった地面から赤外線が放射され、それが大気を暖めるおもな熱源になる。だから、対流圏の気温は、地面に近い低高度で高い。

 詳しくは第2章で説明するが、対流圏では、空気が上下にかき混ぜられる「対流」が起きやすい。大気の動きが活発で、高気圧や低気圧などによる変化に富んだ気象がみられるのも、この対流圏だ。

 対流圏の上に載っている層が「成層圏」だ。対流圏との境目を「対流圏界面」あるいはたんに「圏界面」という。成層圏では、対流圏とは逆に、高度が増すほど気温は上がる。

 成層圏の高度20~30キロメートルにはオゾンの多い「オゾン層」がある。オゾンは太陽の紫外線を吸収して成層圏を暖める効果がある。わたしたちにとって有害な紫外線のほとんどが地表に届かないのは、オゾンが吸収してくれるからだ。

 成層圏の上端は高度約50キロメートルで、この高度まで気温は上がり続ける。オゾンが多いのは高度25キロメートル前後だが、太陽からの紫外線はそれより高い位置からすでに吸収され始めているため、結果として、オゾン層より上で気温はさらに高くなる。成層圏では、冷たい空気の上に暖かく軽い空気が載っているので、基本的には対流圏のような激しい現象が起きない安定な構造だ。

 成層圏の上端、すなわち「成層圏界面」で接しているさらに上の層が「中間圏」だ。高度80キロメートルくらいまで続いている。ここでは、対流圏とおなじように、高度とともに気温は下がる。

 中間圏の上の「熱圏」では高度とともに気温は上がり、高度百数十キロメートルで300度Cを超える。宇宙を漂うちりが高速で地球大気に突入して光る「流星」や、太陽から飛来した電気を帯びた粒子が地球大気の成分粒子と衝突して発光する「オーロラ」は、この熱圏で起こる現象だ。