挑戦の地(9月3日)

AI要約

南相馬市で実験用の小型ロケットが打ち上げられ、地元の住民から歓声が上がった。

ロケットの打ち上げは2年前のベンチャー企業の拠点設立からの成果であり、今後も宇宙への挑戦を続ける予定。

地元の住民は過去の試練から力を得ており、将来的には人工衛星の投入も目指している。

 飛行時間20秒、このうち目視できたのは10秒足らず。南相馬市の空き地から発射された全長1・8メートルの実験用の小型ロケットは、あっという間に雲間に突入し、パラシュートで太平洋に降下した▼打ち上げたのは、2年前に市内に拠点を構えたベンチャー企業。行政の手厚い支援を糧とした。機材の不備などで初の発射は1日延びるトラブルに見舞われた。まばゆい光が天高く舞い上がると、見守った住民から歓声と拍手が湧いた▼実験の舞台は小高区井田川地区。明治以降の大規模な干拓事業を経て、田園が広がる。低地のため水害に苦しんだ時代もあったが、排水施設を整え、良好な農地に発展した。震災の津波で壊滅的な被害を受けても、ほ場整備による農地の再生を進める。度重なる試練を乗り越えてきた地で、宇宙への一歩が刻まれた▼今回のロケットの高度は約340メートルだった。10月には上空20キロに達する6メートル級のロケットの発射実験を計画している。いずれは、地上数十キロ先の成層圏に飛ばした気球からロケットを打ち出し、人工衛星を投入する。道のりは長くとも、挑み続ける胆力を蓄えてきた地の住民は、その先に必ず成功があると知るから頼もしい。<2024・9・3>