能登半島地震での『防災上の課題を検証』して地域防災計画計画を見直し…避難行動や意識調査の結果から

AI要約

能登半島地震の発生から8カ月が経過し、防災上の課題や意識の調査結果が明らかになりました。

県民の避難行動や意識、ハザードマップの認知度の低さなどが問題視されています。

県は検証結果を踏まえて地域防災計画の改定を行う方針です。

能登半島地震での『防災上の課題を検証』して地域防災計画計画を見直し…避難行動や意識調査の結果から

能登半島地震の発生からまもなく8カ月。

富山県内を観測史上最大の揺れが襲い、初めて津波警報が出された地震で浮き彫りとなった防災上の課題を洗い出し、次なる備えに生かそうと県が検証を進めています。

その中で、県民の4人に1人が津波の想定や避難場所を記したハザードマップを知らないなど県民の避難行動や意識調査の結果が明らかになりました。

あの日、津波の浸水想定区域以外の人が車で避難したことで、渋滞の発生につながった可能性があることが指摘されています。

県防災危機管理センターで開かれた能登半島地震の災害対応検証会議。

地震発生時に避難行動により県内各地で道路が渋滞したことや自治体が発信した災害情報が特に高齢者などの住民に伝わらなかったこと、それに、県民にハザードマップや避難方法が周知されていないなどの課題を検証し、県の地域防災計画を見直します。

その課題を浮き彫りにする2つの調査結果が、30日の会議で報告されました。

1つ目が能登半島地震発生時に県民がとった避難行動や防災意識の変化を把握するアンケート調査です。

調査は、18歳以上の県民を対象に今年6月中旬から7月中旬にかけて実施されました。

それによりますと、「地震発生時にいた場所から避難したか」という設問に対し、「他の場所に避難した」と答えた人は25.4%、4人に1人でした。

避難した理由としては、「津波警報が出たから」が最も高く25.9%。

次いで「テレビやラジオで避難が呼びかけられたから」が19.4%。

「余震が怖かったから」が19.1%でした。

また避難を開始したタイミングに関する設問では、地震発生から「10分以内」に避難を開始した人は全体の5割を超えていました。

避難の方法については、推奨されている「徒歩」で避難した人は2割弱にとどまり、8割近い人が車で避難していたことがわかったということです。

一方、今回のアンケート調査で浮き彫りになったのが、津波に関するハザードマップの認知度の低さです。

「自宅のある地域のハザードマップを見たことがあるか」という設問に対し、「地震の発生前から見たことがある」と答えた人はおよそ6割だったのに対し、地震発生後も「見たことがない」と答えた人は全体の24.5%、4人に1人に上ったことがわかりました。

これらの結果を踏まえ、県は、津波を警戒して多くの県民が短時間のうちに車で避難したため渋滞の発生につながったことを指摘し、その要因として、津波の浸水想定区域が正しく理解されていないことを挙げています。

そして、2つ目の調査、地震直後に人がどのような動きをしたのかスマートフォンの位置情報を活用し、分析を行った結果も示されました。

これは地震発生直前、元日の午後3時10分から4時10分における富山市内の人の分布を表したものです。

人が多い場所は赤く表示され、色が濃いほど密集していることを表しています。

同じエリアの地震発生後、午後4時10分からの1時間の状況を見てみると…道路に沿う形で濃い赤色の筋ができているのが見て取れます。

分析の結果、沿岸から5キロ以上離れたエリアでも人がさらに沿岸から山側へ移動していたことがわかったということです。

一方、氷見市内で同様の分析を行ったところ、津波の浸水想定区域にある氷見駅周辺で、地震発生から1時間以上経ったあとも、人がとどまっている状態が確認されたということです。

県はこれらの人流データの分析結果から、「原則徒歩による避難」が推奨されているものの各地で車が利用された事や、津波警報が発令されたにも関わらず海岸線にとどまる人が見受けられたとしています。

これに対し、会議に出席した委員からは、車での避難を前提とした対応や、沿岸部に特化した避難方法の検討が必要だとする意見が出されました。

*兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科 阪本真由美教授

「車両避難の人が多い状況なので、車両避難先を整備する。そこへの誘導方法も含めて検討してもらいたい。避難のタイミングが割と早く、5分から10分以内で避難を開始した人が多い。ということは避難所を行政が開設しようとしても先に避難してしまう可能性がある。避難する人が自主開設できる避難所運営のあり方を検討すべき」

*富山県立大学 工学部 呉修一教授

「富山県で地震が起こった時は信号が止まっていたり道路の地盤沈下や建物倒壊が起こったりするので、今回以上の渋滞が起きるはず。10分以内で避難したのは素晴らしいが津波の到着の想定はもっと早く、3~5分で来てしまうので10分で逃げても遅い。本当に危ないゾーンを明確にして地震が起きた瞬間走ってどこまで逃げられるか検討すべき」

県は、今年10月に検証会議の中間報告を取りまとめ、今年度中に改定する地域防災計画に反映させる方針です。