【カケルサンイン】隠岐島前高校生がブータン訪問 「ごみ問題」を同年代と意見交換 花開け交流の種

AI要約

ブータンと海士町の高校生が人口流出の問題に取り組む取り組みについて。ブータンの経済苦境や生徒たちの取り組み、隠岐島前高校の取り組みに焦点を当てる。

生徒たちは海士町特産のサザエの再利用方法やブータンのごみ処理問題に取り組む。異なる視点からのアプローチが共有され、学生間の情報共有が図られる。

ブータンの学校でのプロジェクトが地域と繋がりを深め、他の学校でも取り入れられる可能性がある。海士町の支援がブータンでも広がりを見せる。

【カケルサンイン】隠岐島前高校生がブータン訪問 「ごみ問題」を同年代と意見交換 花開け交流の種

TSKと山陰中央新報の共同企画「カケル×サンイン」。同じテーマをテレビ、新聞、それぞれの視点で掘り下げ、核心に迫ります。

田中祐一朗記者:

「島根とブータン、国境を越えて、人口流出という共通課題の解決に海士町の高校生が取り組んでいます。生徒たちはこの夏、ブータンを訪問し、現地での取り組みに密着しました。

南アジア、ヒマラヤ山脈のふもとに位置する国「ブータン」。農業と観光が主な産業で、経済発展よりも国民の幸福を追求する独自の政策を掲げ、「幸せの国」とも呼ばれています。そのブータンでは、コロナ禍のあと、観光業の回復が遅れるなど経済的な苦境に陥り、若者の失業率が上昇、地方から都市部へ、さらに国外への人口流出が問題となっています。

こうした人口流出を食い止めようと、日本からもJICA・国際協力機構などを中心に支援を進めています。こうした中、生徒自身が地域の課題を見つけ、その解決策を探り、実践することを通じて学ぶ「地域課題解決型学習」に取り組んでいる海士町の隠岐島前高校の生徒たちが、人口流出という共通課題の解決に挑んでいます。

隠岐島前高校は、2016年にブータンの学校との交流を始め、夏休みを利用して生徒が現地を訪問し、現地での調査などを行っています。2024年は1、2年生4人が参加しました。

ブータンの南西部に位置するチュカ県。人口は約8万人、山に囲まれ、幻想的な風景が広がる風光明媚な地域です。このチュカ県の学校を訪れたのは、2年生の渡邊優奈さん。奈良県の中学を卒業し、隠岐島前高校に進学した「島留学」生です。

訪問したゲドゥ学校は生徒数約600人。日本の小学生から高校生までの世代が一つの学校で学んでいます。渡邊さんは授業に出席、行事にも参加し、学校生活を通じてブータンの文化を体験します。この学校では決まった曜日の朝に集会が開かれ、生徒たちが歌を歌います。教室に戻ると授業開始、先生が話しかけるのは英語です。この日は、生徒たちが日ごろの「課題探求学習」の成果を発表。渡邊さんも自身の研究成果を披露しました。

隠岐島前高校・渡邊優奈さん:

「サザエは最も海士町で有名な貝の一種です。」

海士町特産のサザエなどの貝殻が廃棄されていることに着目、再利用の方法を研究しています。日本からやってきた渡邊さんの「海の幸」がテーマの発表に山国・ブータンの生徒たちも興味を持った様子です。

一方、ブータンの生徒は、ごみ処理の問題について発表。ブータン国内では、生ごみなどを土に埋めて処理するのが一般的で、ごみの「分別」が根付いていない現状を報告、解決策としてペットボトルの回収法について提案しました。

隠岐島前高校・渡邊優奈さん:

「ごみ問題っていうのを知らなくて、お互いに。私はごみを活用しようの観点だったんですけど、ゲドゥの方とかは集めようという活動をされていたので、ひとつの問題に対してもいろんな視点があるんだっていうのが感じられたし、新しい気付きになったなと思いました」

ゲドゥ学校の生徒:

「(日本の生徒は)非常に努力していることがわかったし、とても研究されていた。私たちはプロジェクトの目標を達成しつつあるので、さらなる課題を解決できる方法を模索していきたい」

発表のあと、生徒たちはそれぞれの提案についてどのように生かすか、さらによくするにはどうしたらいいか、意見を出し合いました。

ゲドゥ学校・リラ・バドゥル校長:

「現状を見てみると、いま学校と地域がゆっくりと繋がり始めています。学校内でプロジェクトが成功すれば地域と繋がり、アイディアや知識を共有し、地域の進歩に役に立つと思う」

こうした探究型の授業の成果が徐々に表れ、学校と地域のつながりが深まっているといいます。その成果を踏まえ、ブータンでは今後、地域課題解決型学習を他の学校にも広げるよう検討が進んでいるということです。海の町・海士町から贈られたタネが山国・ブータンで花開けば、将来、人口流出に歯止めをかける一手につながるかもしれません。

田中祐一朗記者:

「今回の取材で、海士町の手法がブータンでも広がる可能性を秘めていると感じました。その背景にあるのが、さまざまな分野でのこれまでの日本の支援です。じゃがいもに紫玉ねぎ、トマトやキャベツ、ゴーヤと日本でもおなじみの野菜が並んでいます。首都ティンプー最大の市場、店先には日本でもおなじみの野菜が並んでいました。ブータンで栽培される野菜の多くは1960年代に日本から導入されたものがもとになり、いまではブータンの家庭の台所に欠かせないものになっているということです。今回のテーマについて、28日と29日の山陰中央新報の紙面にも掲載されています。地域の課題解決に挑む生徒たちが、将来、ブータンと隠岐をどのように変えていくのか期待しながら見守りたいと思います」