磁石と引力(8月17日)

AI要約

子どものいる家庭に重宝された磁石の不思議な特性。自由研究に最適で、常に好奇心を刺激する魔法の教材である。

磁石の特性に関する疑問や迷信。なぜ方位磁石は北を向くのかや、引き合いとはねつけ合う仕組みなどについて詳細に紹介される。

世界の対立や争いについて、磁石の性質と対比する。地球上の全ての人間が繋がる万有引力について希望を捉える。

 この夏休み、子どものいる家庭できっと重宝がられただろう。不思議な特性を持つ磁石だ。自由研究に、もってこい。いつの時代も小さな好奇心を刺激してやまない。いわば、魔法の教材だ▼なぜ、方位磁石は北を向くのか。なぜ引き合い、はねつけ合うのか。西洋では古代から賢人たちを悩ませた。不可解さゆえか、数々の迷信も生まれる。科学史家・山本義隆さんが大作「磁力と重力の発見」で紹介した。霊魂を宿しているとか、ダイヤモンドやニンニクで効力を失うが、雄ヤギの血で回復するとか…▼磁石とは真逆のようだ。人の世は似た者同士が呼び合い、相反する群れを責め立てる。そのむなしさを、あらためて思った夏でもある。ウクライナを巡り、米欧とロシアは強くいがみ合ったまま。アラブ諸国とイスラエルの対立は、戦火拡大の懸念をはらむ。平和の祭典に掲げられた五輪旗は、果たして威光を発していたか▼先の大戦でも、人類は枢軸国と連合国に割れて争った。だが、吸着と反発だけが、この世をつかさどってはいない。人を等しく大地につなぎ置く万有引力がある。みな地球人、隔てなどない。終戦80年の節目に向け、希望の研究テーマに。<2024・8・17>