中間貯蔵で安全協定 国内初、9月にも稼働

AI要約

青森県むつ市で使用済み核燃料中間貯蔵施設の安全協定が締結され、50年間の保管期間が定められた。

国内初の中間貯蔵施設は9月に稼働予定で、キャスク1基が搬入され、一時保管されることになる。

県と市、事業者は中間貯蔵の破綻に備えて覚書に署名し、安全対策を重視する方針を示した。

中間貯蔵で安全協定 国内初、9月にも稼働

 青森県むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設を巡り、県と市、事業を担うリサイクル燃料貯蔵(RFS)は9日、保管期間を最長50年間と定めた安全協定を締結した。事業開始までに東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)から使用済み核燃料を入れたキャスク(金属容器)1基を搬入。最終検査などを経て、原発敷地外で一時保管する国内初の中間貯蔵施設が9月にも稼働することになる。

 調印式は青森市のホテル青森で執り行った。協定書には宮下宗一郎知事、山本知也むつ市長、高橋泰成RFS社長に加え、立会人としてRFS親会社の小早川智明・東京電力ホールディングス社長、村松衛・日本原子力発電社長が調印した。宮下知事の要請を受け、経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部の久米孝部長が同席した。

 県と市、各事業者の5者は、事業困難なら核燃料の施設外搬出を事業者に確約させるなどとした「覚書」にも署名した。再処理事業の中止といった、中間貯蔵を含む「核燃料サイクル」の破綻を念頭に置いた。

 記者会見で宮下知事は「事業がスタートして終わりではなく、サイクルが適切に進むのか、国が一貫性を持って進むのか、(核燃料の)搬入計画を見定めながら厳しく県民目線で対応していく」と述べた。

 安全協定には建屋の使用期間、核燃料の貯蔵期間をいずれも「50年間」と明記。最長50年に及ぶ一時保管後を見据えた使用済み核燃料の搬出先を巡っては、議会や県民から「不明確」「永久貯蔵にならないか」などの懸念が相次いだ。宮下知事は、最終判断前に経産相、東電社長らと会談し、搬出先を日本原燃・再処理工場(六ケ所村)と想定して次期エネルギー基本計画で具体化を図ることや、覚書締結の承諾を得た。

 安全協定を踏まえ、今後は柏崎刈羽原発でキャスクに核燃料を入れ、むつ市まで海上輸送。操業前の事業者検査や原子力規制委員会の最終確認を経て、9月中にも貯蔵事業がスタートする。

 山本市長は「市を二分する議論の末に誘致に至った先人の思いがついに実現する段階に進み、意義深い」と感慨を込めた。高橋社長は「キャスクを持ってくる環境は整ったが、(事業開始の)時期ありきというよりは、安全最優先に進めることが第一」と述べた。

 中間貯蔵は、原発で生じた使用済み核燃料を再利用するサイクル政策の一環。再処理工場に運び込むまでの間、一時保管する。水や電気は使わず、空気の自然対流でキャスクを冷やす。

 東電と原電の核燃料を対象に、完成済みの1棟目に3千トン、今後建設する2棟目に2千トンを貯蔵する計画で、RFSは26年度までの3年間に96トンを搬入するとの見通しを示している。