京都の水泳教室で指導する義足のコーチ「自分を認めてくれた」失意の底から救ってくれたのは?

AI要約
水泳コーチが交通事故で右足を失いながらも水上安全法救助員として活動する姿社会の理解と出会いに支えられて再び泳ぐ喜びを取り戻す水難救助や事故防止のため技術を磨く意欲
京都の水泳教室で指導する義足のコーチ「自分を認めてくれた」失意の底から救ってくれたのは?

 交通事故で右足を失った水泳コーチの男性が、水難救助など高い技術が求められる日本赤十字社の水上安全法救助員として活動している。一度は泳ぐこと自体を諦めたが、周囲の理解や出会いがあって泳ぎの世界に復帰。感謝を込め、水難救助や事故防止のため日々技術を磨いている。

 ミズノスポーツサービス(大阪市)の水泳指導責任者で、現在、京都アクアリーナ(京都市右京区)で働く村上貴男さん(43)。18歳からスイミングコーチとして大阪府内で働いていたが、28歳の時にオートバイ事故に遭って右足を切断し、退職した。「水泳から遠ざかり、働き口を探しても『義足』を理由に不採用ばかり。働く意欲も失っていった」という。

 どん底状態が1年半ほど続いたころ、知人の紹介で同社のアルバイト面接を受けると、思いがけず採用された。やってみるとコーチの仕事は口頭指導が多く義足でも問題はなく、指導力を評価され翌年には正社員となった。

 再び泳げた喜びと自分を認めてくれた会社への感謝から、仕事への責任感も高揚。失効していた日赤の水上安全法救助員資格の再取得を目指した。救助員は、おぼれた人を背後から抱え岸に引き上げるなど高い技術が求められる。村上さんの義足は「風呂用」で足首は動かないが、救助用の立ち泳ぎの技術も習得した。「足の有る無しは関係ない。周りの人とコミュニケーションを取りながら、どう工夫していけるかが大事」と、振り返る。38歳で資格を再取得し、その頃には同社の水泳指導責任者を任されるようになっていた。

 6月には5年の資格期限を迎えたため改めて講習を受けて資格を取得、技術をより確かなものにした。水の事故が増える季節を前に、村上さんは「水難事故が起きてからの対処より、水難事故を起こさないための知識を伝えることに力を入れていきたい」と意欲を燃やしている。