8月6日 広島きょう原爆の日 あの日から79年、被爆地に向く市民の目

AI要約

原爆の日を迎えた広島市で、世界情勢の厳しさと原爆被害を思い起こす機運が高まる。

国際リーダーたちの核兵器拡大政策に対する市民の危機感と広島市長の平和宣言が重要視される。

平和記念式典に参加する109カ国の代表が核戦争のない世界を目指す動きを支持し、被爆者達の証言が重要性を増す。

8月6日 広島きょう原爆の日 あの日から79年、被爆地に向く市民の目

 華やかな「平和の祭典」をかき消すかのように、武力による争いが続く。核には核で対抗しようとする抑止論もやまない。広島は6日、原爆の日を迎えた。たった一発の爆弾が街を破壊し、子どもを含む大勢の市民の命を無差別に奪った。過ちを繰り返してはならない。79年前のあの日を世界は忘れてはならない。

 「怖い」「怖いよ、お父さん」。ごった返す広島市の原爆資料館で、核の惨禍を伝える「無言の証人」を前に、少女が父親の手を何度も握りしめていた。「こんな時代だからこそ、平和の尊さを感じてほしくて」。父親は、つなぐことも少なくなったという11歳の娘の手の感触を確かめ、この夏に初めて資料館へ連れて来た理由を明かした。

 ロシアによるウクライナへの侵攻は長期化し、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃も悪化している。近年にない厳しい国際情勢が、原爆被害を原点に世界平和を願う被爆地へ国内外の市民の関心を向けさせる。資料館には昨年度、過去最多の198万人が訪れた。本年度はさらに上を行くペースだ。

 その心情を世界のリーダーたちは共有できているのだろうか。

 昨年5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は「核兵器なき世界」を目指す姿勢を示したが、機運は高まっていない。米国はことし5月に34回目の臨界前核実験を強行。7月には日米両政府が、米国が核兵器を含む戦力で日本防衛に関与する「拡大抑止」の強化に合意した。核の威力にすがるのはロシアやイスラエルだけではない。

 広島市は6日午前8時から平和記念公園で平和記念式典を営む。松井一実市長は平和宣言で、国際情勢の混迷ぶりに危機感を示し、東西冷戦を終結に導いた旧ソ連大統領の故ミハイル・ゴルバチョフ氏の言葉を引用。核抑止力に依存する為政者に政策転換を促すとともに、市民社会の行動を提起する。

 厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ人は3月末時点で10万6825人。平均年齢は85・58歳となった。市はこの一年に死亡が確認された広島の被爆者5079人の名前を原爆死没者名簿に書き記し、式典の初めに原爆慰霊碑の石室に納める。名簿は3冊増え128冊計34万4306人になる。

 今年に入り、焦燥感から、これまで口を閉ざしてきた被爆者たちが相次いでその体験を伝え始めた。ウクライナやガザの少年少女を79年前の自身と重ね「他の誰にも同じ思いをしてほしくない」と。6日は、亡き人たちを悼み、核兵器も戦争もない世界の実現へ向けて、市民一人一人が自覚を持ち、行動を決意する一日になる。

 式典には岸田文雄首相や、核保有国の米英仏印、イスラエルを含む109カ国と欧州連合(EU)の代表が参列を予定。市は今年、安全対策の強化を理由に入場規制エリアを公園全体へ広げ原爆ドーム周辺も含む。規制は午前5時から9時までで、6時半に6カ所の入場口を開設する。