広島の受験生、難易度下がった「関関同立」へ流出 地元の大学は定員割れ続々

AI要約

広島県内の私立大学で定員割れが進んでおり、地元受験生の減少と関西地域の大学への流出が問題となっている。

県内私立大学は少子化の影響や国立大学難易度の低下により、受験生の選択肢が広がり、競争が激化している。

さらに、地元大学の対抗策として、教育現場や受験科目の見直しが求められている。

広島の受験生、難易度下がった「関関同立」へ流出 地元の大学は定員割れ続々

 広島県内の私立大で、定員割れが進んでいる。今春は14校のうち12校が該当し、充足率が90%未満となる大学も続出した。何が起きているのか。18歳人口がさらに減る時代への備えは―。少子化時代の地方私立大の在り方を考える。

 全国は横ばい、広島は右肩下がり―。2020年度と24年度を比較すると、顕著な差が浮かび上がる。この間、全国の私立大入学者は約50万人で横ばいだったが、広島県内の私立大14校の入学者は計8981人から7713人へ、14・1%も減った。一体どこへ吸い取られたのか。

 「大都市の偏差値が高い大学に、今まで手の届かなかった層が合格している」。広島経済大(広島市安佐南区)入試広報センターの長尾政宏センター長は今春の受験動向を分析し、危機感を募らせる。広島工業大(佐伯区)は志願者数がここ5年で約3割減ったとし「関西の私立大に流れているのも一因」とみる。

 こうした見立てを裏付ける資料がある。中四国地方に住む受験生がどの地方の私立大を志望したかを、年度ごとに追った大手予備校河合塾のデータだ。それによると、地元(中四国地方)の私立大志望は20年度に37%あったが、24年度は5ポイント減の32%にとどまった。一方で、近畿地方の私立大志望は36%から9ポイント増え、45%となった。20年からの新型コロナウイルス禍で弱まった県外志向が回復したこともあり、完全に形勢が逆転した。

 長谷川智彦校舎長は「少子化の影響もあり、難関の『関関同立』など近畿の私立大の難易度が以前より下がった」と説明する。関関同立とは関西、関西学院、同志社、立命館の4大学の総称。今春の受験生は、数年前の同じ偏差値帯の生徒より、合格率が高かったという。

 その影響は当然、広島県内の私立大にも及ぶ。長谷川校舎長は、関関同立と広島修道大(安佐南区)に両方合格して前者を選ぶ塾生も多い、と明かす。学力上位層の県外流出が進むと、中位層も従来なら諦めていた大学に入れるようになり、玉突きのように他の地元大学の入学者が減ってしまう。

 もっとも、合格しやすくなったのは私立大だけではないようだ。「国立大の難易度低下を実感している」と語るのは広島工業大の大谷幸三アドミッションセンター長。「以前なら来てくれた成績の受験生に『山口大に合格したので』などと逃げられる」とこぼす。従来は併願した国立大に合格する受験生はわずかだったが、その合格ラインが下がっているという。

 「授業料が安く、受験科目が少ないため受験しやすい近隣県の公立大も脅威だ」「高校の教育現場が国公立大の合格者数を重視しているのも、私立大にとっては苦しい」。各校の担当者は焦りを隠さない。