「思い出したくない…」 佐世保高1同級生殺害事件から10年 元少女知る関係者の記憶と思い

AI要約

2014年に発生した長崎県佐世保市の高1女子同級生殺害事件から10年が経過し、関係者の多くが事件を思い出したくないと感じている。

加害者の元少女や被害者の印象、過去の問題行動などが振り返られ、事件が引き起こす疑問や不可解さが浮かび上がってくる。

事件からの教訓を活かし、子どもたちへのサポートを行う組織の取り組みも紹介されており、事件が残した影響と向き合う大人たちの姿が描かれている。

「思い出したくない…」 佐世保高1同級生殺害事件から10年 元少女知る関係者の記憶と思い

 長崎県佐世保市で2014年に発生した高1女子同級生殺害事件から10年。当時を知る関係者の多くは異口同音に「思い出したくない…」とこぼし、事件に触れようとしない。年月が流れても消えることがない関係者の心に刻まれた傷。「風化した方がいい」。ある男性はこうも話した。事件が残した癒えない「傷跡」をたどった。

 「まさか…」。10年前、同市小佐世保町の草場知博さん(76)は事件の加害者が元少女(25)だと知り、言葉を失った。1級建築士の資格を持つ草場さんは、元少女の父親に頼まれて2006年、元少女の家に茶室を作った。完成後、招かれて家を訪れると、両親と2人の子どもがいた。正座をして「初めまして」とあいさつする元少女。当時、小学校の低学年だったが、「立派な子」という印象を受けた。

 被害者にも面識があった。佐世保のある店に行った際、店主の孫だという高校1年の少女=当時(15)=に会った。「テキパキした受け答えのしっかりした子だった」。数カ月後に事件は起きた。

 名切町の男性(73)の目にも、事件を起こした元少女は「どこにでもいるような女の子」と映っていた。元少女の母と小学校で共にPTA活動に従事していた男性は、元少女が中学3年時に会ったことがある。「あんな事件を起こすとは。人間って、心に隠しているものは分からない」とつぶやいた。

 だが、ある女性の元少女に対する印象は違っていた。女性の息子は小学校で元少女の同級生だった。事件の知らせを聞き、「やっぱり」と思った。理由は、元少女が小学6年時に起こした給食異物混入。同級生の給食に洗剤などを入れて問題になったが、事件化はされなかった。その後、猫を解剖したり、父を金属バットで殴打するなど、元少女の問題行動はエスカレートしていく。

 元気で明るかった少女がなぜあんな事件を起こしたのか。幼少期の元少女を知る山北眞由美さん(80)は今も思い悩む。山北さんは現在、不登校や引きこもりの当事者らを支援するNPO法人「フリースペースふきのとう」の理事長を務めている。「生きづらさなどを訴えていた子どものSOSに気づけなかった大人社会の責任は重い」。そう自戒し、今でも子どもたち一人一人と向き合っている。