波乱が相次いだ夏 今年も「投高打低」 全国高校野球長崎大会 総評

AI要約

長崎大会で創成館が2年連続4度目の優勝を果たし、波乱の大会が幕を閉じた。

創成館は堅い守りと手堅い攻撃で優勝を決め、7年ぶりの決勝進出を果たした清峰も活躍した。

大会全体では投手の力が際立ち、打力の弱さが課題となった。開催時期の見直しも検討されるべきだ。

波乱が相次いだ夏 今年も「投高打低」 全国高校野球長崎大会 総評

 第106回全国高校野球選手権長崎大会は29日、第3シードの創成館が2年連続4度目の頂点に立ち、幕を閉じた。今大会は序盤から波乱が続き、第2シードの海星が初戦の2回戦で敗退。第1シードの長崎日大も準々決勝で姿を消した。55校46チームが熱戦を繰り広げた大会を総括する。(小川裕幸)

■堅い守りで

 創成館の強みはバッテリーを中心にした堅い守りだった。決勝で2安打完封した村田をはじめ、奥田ら投手陣は計46回で防御率0・78。バックも遊撃小森山、二塁向段、捕手小副川、山下を中心に、準決勝までわずか2失策。難しい打球も危なげなくアウトにしていた。攻撃は手堅く、犠打数は5試合で22。決勝は送りバントを7度も成功させた。相手の隙を逃さず走者を確実に得点圏へ進め、1点を積み重ねる。攻守両面で基本に忠実だった。

 7年ぶりに決勝に進んだノーシードの清峰は、3回戦から瓊浦、九州文化学園、長崎総合科学大付のシード3校を倒した。1回戦から全6試合を1人で投げ抜いたエース南の防御率は1・00。今大会、最も躍動した選手だった。創成館との決勝は失策などが絡んで4点を失ったが、6試合目にして自身最速の145キロを記録するなど、最後まで球威は衰えなかった。

■「投高打低」

 4強入りしたのは第7シードの大崎と第8シードの長崎総合科学大付。大崎は攻守両面で安定していた。緩急と制球で勝負したエース川口は、速い球がなくても打ち取れる投球術を備えていた。機動力を駆使した攻撃は他校に重圧を与え続けた。際立った選手がいない中、4強入りできるチームに仕上げてきたのはさすがだった。来季も間違いなくV戦線に絡んでくるチーム力を示した。

 準決勝で長崎日大を破って初の4強入りを果たした長崎総合科学大付は攻守のバランスが取れていた。長崎日大戦で完封した増永と大久保のバッテリーを軸に、堅守でしっかりと試合をつくった。攻撃は相手投手を分析して、好機を得点につなげる勝負強さがあった。

 4強以外にも好チームは多かった。鹿町工は顔なじみの地域の仲間で健闘。2回戦で第2シードの海星を破って、2年ぶりに8強入りした。佐世保工は3回戦で創成館をあと一歩まで追い詰めた。選手層の厚い私立校相手に奮闘した公立校も少なくなかった。限られた練習時間、少人数のチームが、何とか効率を上げながら練習して力を付けてきていた。指導者たちの努力が垣間見えた。

 懸念されたのは打力の弱さ。全体的に長打が少なく、柵越え本塁打は佐世保野球場で大村工の梅本が放った1本だけだった。「飛ばないバット」の影響があったのは否めないが、今年も「投高打低」の大会になってしまった。今後は小手先の技術よりも先に、基本的な筋力、体力向上が不可欠ということを教えられた。

■開催時期は

 開催時期への不満の声も少なくなかった。今年の開幕は全国的にも遅い13日。甲子園の開幕は8月初旬のため、日程も過密にならざるを得ない。さらに今年は初日から雨が続き、1回戦が3日連続で順延。決勝予定日が1日繰り下がった。

 沖縄県は今年、6月22日に開幕した。試合間隔が長ければ、必然的に選手たちのコンディションは良くなる。炎天下で短期間に試合を続ければ、体調面の管理は難しい。前倒しでの開幕など、日程の見直しは避けられないのではないだろうか。関係者の決断と実行が望まれる。

 8月7日に夏の甲子園が開幕する。前評判を覆して頂点に立った創成館が、どんなプレーを見せてくれるか。長崎大会同様の「守り勝つ野球」で旋風を巻き起こすことが期待される。