朝イチから大人気「使える学校図書館」 児童の貸し出し冊数3倍、必要な人材とは

AI要約

滋賀県では学校図書館の充実に取り組んでおり、学校司書の配置に関して新たな試みを始めている。地域によって学校司書の配置には格差があり、この問題に対処する取り組みが注目されている。

学校司書は学校図書館の運営だけでなく、授業支援や子どもの居場所としての機能も果たしている。地域の図書館との連携も密接で、図書館サービスの充実に貢献している。

滋賀県では学校司書の配置に関する取り組みの拡大を図り、全体の充実につなげるためにさまざまな支援プログラムを展開している。学校図書館の機能強化が地域全体の教育環境にどのように影響するかが注目されている。

朝イチから大人気「使える学校図書館」 児童の貸し出し冊数3倍、必要な人材とは

 多くの児童や生徒にとって、学校図書館(図書室)は本に接する最も身近な場所。だが、その運営に携わる「学校司書」の配置は、各市町で大きな格差があるのが実情だ。滋賀県は学校図書館の充実に向け、新たな試みも始めている。

 愛知川小(愛荘町)の図書室は朝8時に開く。登校したばかりの児童が次々と訪れて本を返し、また別の本を借りていく。

 迎えるのは学校司書の山岡照子さん。「昼休みは外で遊びたい子が多いので、朝が一番にぎやかです」と目を細める。

 図書の貸し出しや整理だけでなく、授業で使えそうな本や新聞記事を教員に提案したり、入室しやすいよう入り口付近に本を並べたりと業務は多岐にわたる。午後3時まで常に開いていて、子どもの居場所としての機能も兼ねている。

 同町は「まちじゅう読書」を掲げ、2020年度から専任の学校司書を小学校全4校に週5日配置している。以前は学校図書館が開いている時間は限られ、あまり利用もされていなかったという。

 学校司書は2館ある町立図書館の職員として採用されており、業務の終了前には同館に寄って情報を共有。学校で足りない資料は同館で調達するなど連携もスムーズだ。

 町内の小学校での貸し出し冊数は、ここ10年ほどで3倍以上に増え、授業での活用も進んでいるという。町立図書館の三浦寛二館長は「読書はすべての学びの基礎であり、身近に環境を整えれば子どもは本を読んでくれると実感している。保健室に専任の先生がいるように、『使える学校図書館』のためには朝から毎日開いていて学校司書がいることが重要」と指摘する。

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「学校司書ゼロ」の市町も 学校司書は15年施行の改正学校図書館法で法的に規定された。資格の定めはなく、配置も努力義務のため、自治体によってばらつきは大きい。

 県の調査(1日時点)によると、公立小中など313校に対し、学校司書数は116人にとどまる。さらに複数校での勤務が多く、1校当たり週1~2日の自治体が目立つ。

 12学級以上の学校には教員で専門知識を持つ「司書教諭」を置かなければならないが、その多くが担任と兼務。経験者の1人は「他の業務で忙しく(学校図書館関連は)優先順位が下がるのが実情。学校司書は絶対に必要」と強調する。

 国も小中学校1・3校に学校司書1人の配置を目標とする。22年度からの5カ年で総額1215億円を地方交付税交付金として措置する計画だが、実際の使途は自治体の裁量に委ねられている。

 野洲市は学校司書がゼロ。同市教委によると、昨年度は募集段階まで準備を進めたが、他の教育施策との兼ね合いなどで最終的に予算が付かなかったという。ただ、本年度から1校をモデル校に位置付けるなど野洲図書館の司書が支援に当たっており、同市教委も「来年度には何とか置きたい」とする。

 他にも、配置ゼロの甲良町は本年度から1人募集しているが、まだ採用に結びついていないという。

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「人いないと活性化できない」 すべての子どもが本に親しめる環境を整えようと、県は本年度から「こども としょかん」の取り組みを本格化させている。第5次県子ども読書活動推進計画に基づき、学校図書館の機能強化は柱の一つだ。

 まず、県立図書館(大津市)に「サポートセンター」を新設。教員や学校司書の経験者ら4人体制で学校などからの相談に応じたり、各市町に出向いて聞き取りや助言を行ったりする。担当者は「先進事例を収集して発信したい」とする。

 県は今月、小中学校の司書教諭や市町の学校司書らを対象にした連絡協議会を初めて開き、学校図書館の機能や重要性を共有した。中学校区に分かれての話し合いもあり、「学校全体で組織的に動く必要性が分かった」「横のつながりをつくるきっかけになった」といった意見が出た。今後も協議会を予定するほか、今夏から学校司書の養成講座も計画している。

 学校図書館に詳しい滋賀文教短期大の有山裕美子講師は「デジタル時代で学校図書館には情報・学習センターとしての役割がますます求められるが、人がいなければ活性化はできない。小中学校は市町に任されていて格差も大きい中、県が音頭を取ることで全体の充実につながることを期待したい」と話す。

 学校図書館 学校図書館法で小中高など全ての学校に設置が義務付けられている。本を読む場としての読書センター、学習活動を支える学習センター、情報収集や活用能力を育成する情報センターの機能がある。国の調査(20年度)によると、学校図書館図書標準に基づく蔵書冊数の達成割合は、滋賀の公立小が49・5%(全国71・2%)で42位。公立中は29・2%(同61・1%)で最下位だった。