素朴な味守り続け75年 富山・アイスの太田屋閉店へ、店主「出会いに恵まれた」

AI要約

富山市太郎丸本町のアイスクリーム店「太田屋」が9月23日に閉店し、75年近い歴史に幕を下ろすことになった。素朴な味で近隣住民や向かいにある富山高校の生徒らに愛されてきたが、2代目店主、太田由美子さん(78)が健康状態などを踏まえて決断した。「続けられたのはお客さんや父、夫のおかげ」と感謝する。

店は1950年ごろ、由美子さんの父、豊信さんがアイスキャンデーを販売したのが始まり。数年間の試行錯誤の末、人工甘味料に頼らないアイスを作り上げた。

豊信さんの時代に富山高校の食堂の運営を担ったほど同校との関わりは深い。店内には卒業生の活躍を伝える新聞記事が飾られ、生徒が贈ってくれた風鈴の音が響く。

素朴な味守り続け75年 富山・アイスの太田屋閉店へ、店主「出会いに恵まれた」

 富山市太郎丸本町のアイスクリーム店「太田屋」が9月23日に閉店し、75年近い歴史に幕を下ろすことになった。素朴な味で近隣住民や向かいにある富山高校の生徒らに愛されてきたが、2代目店主、太田由美子さん(78)が健康状態などを踏まえて決断した。「続けられたのはお客さんや父、夫のおかげ」と感謝する。

 店は1950年ごろ、由美子さんの父、豊信さんがアイスキャンデーを販売したのが始まり。数年間の試行錯誤の末、人工甘味料に頼らないアイスを作り上げた。

 94年に胃がんと分かり廃業しようとした豊信さんに、由美子さんが「継ぎたい」と申し出た。翌年に豊信さんが亡くなってからも「お客さんに喜んでもらうのが一番」という教えを胸に、もなかの皮や抹茶の質にこだわる一方で手頃な価格を守った。同い年の夫、晏昇(やすのり)さんが公務員生活の傍ら店を手伝ってくれた。

 膝の痛みなどで立ち仕事がきつくなり、閉店を考えるように。同世代が営む飲食店の閉店も決断を促した。張り紙で閉店を伝えることも考えたが「失礼だ」と思い直し、訪れた客に直接伝えている。

 豊信さんの時代に富山高校の食堂の運営を担ったほど同校との関わりは深い。店内には卒業生の活躍を伝える新聞記事が飾られ、生徒が贈ってくれた風鈴の音が響く。

 閉店に驚いて来た客の「秋までにまた来るよ」「今までありがとう」という言葉を日々かみしめているという由美子さん。「父の供養で2、3年」のつもりだった2代目の営業が約30年間続いたのは人との関わりがあったからとし「出会いに恵まれたのが父からの最大の遺産だったと今になって実感する」と話した。