犯人はサメ。湾内の養殖いけす次々食い破る…被害額1000万円の業者も。「ならば食用に」立ちはだかるハードルは高い 鹿児島

AI要約

鹿児島湾内の養殖現場でサメによるいけす破壊被害が相次いでおり、有効な対策が見つかっていない。

サメの処理や活用には技術や設備投資が必要であり、現在は業者不在や廃業が進んでいる状況。

鹿児島湾内に生息する大型のサメは食用に適さず、小型のサメが使われる料理も存在する。

犯人はサメ。湾内の養殖いけす次々食い破る…被害額1000万円の業者も。「ならば食用に」立ちはだかるハードルは高い 鹿児島

 鹿児島湾内の養殖現場で、サメにいけすの網を食い破られる被害が相次いでいる。海水温の上昇などにより、分布域に変化があったことなどが理由と考えられているが、有効な対策方法はないのが現状だ。水揚げしても加工が難しく、関係者は頭を悩ませている。

 「梅雨明け以降もサメに養殖用のいけすを破られる被害が2、3回はあった」とため息をつくのは、鹿屋市漁協の担当者。鹿児島湾内では5月以降、ブリやカンパチの養殖いけすへの被害が続いている。近くの垂水市漁協や牛根漁協でも同様の被害があり、中には1000万円の損害が出た業者もいる。

 鹿屋市漁協では、サメを釣り上げて駆除する検討を7月下旬から始めた。ただ「どの程度の効果が見込めるかは現時点で不透明。湾内に入ってきているサメの種類や数も今後調べなければ」と担当者。仮に釣り上げたとしても、その後の処分や活用にも大きな課題が残っているという。

 県水産技術開発センターによると、サメは水揚げから時間がたつと身に含む尿素がアンモニアへ変質するため、加工には技術を要する。水にさらす工程も必要で、その水は廃水として処理しなければならない。硬い皮は剥ぐのが難しく特別な設備投資も必要で、一次加工業者も体制をつくれない実情がある。

 県漁連の宮内和一郎専務(64)は「今は鹿児島市中央卸売市場魚類市場でもサメの取り扱いはほとんどない」と明かす。サメはかつて、さつま揚げやはんぺんの原料として流通していたが、現在は輸入の白身魚のすり身に代わられた。「ほぼ全てを引き受けてくれた業者の廃業も大きい」と宮内専務。サメを取り扱う業者不在も響いている。

 すり身のほかにも、志布志市や東串良町では、サメをゆでた郷土料理「せんさら」がある。ただ坪山鮮魚店(同町)の坪山直人さん(64)によると、せんさらに使われるのは体長数10センチの小型のサメがほとんどだ。

 現在、鹿児島湾内で確認される個体はメジロザメと見られ体長は2~3メートル。坪山さんは「皮が硬く、ゆでて食べるのは難しい。すり身にするしかないだろう」と指摘する。また、大きすぎて運搬も難しいため「50~60センチ程度の大きさにカットしてもらわなければ買うに買えない」と話した。