「コロナの怖さ、忘れないで」…体調急変までわずか数十分、感染で命を落とした11歳児の両親が三回忌を前に当時を振り返る

AI要約

新型コロナウイルスに感染した11歳の男児が劇症型心筋炎により急逝した悲劇を振り返る。

悠陽さんはワクチン未接種で自宅療養中に急変し、家族が救急措置を取ったが間に合わず。

両親は感染の危険性を訴え、コロナ再感染防止の重要性を呼びかけている。

「コロナの怖さ、忘れないで」…体調急変までわずか数十分、感染で命を落とした11歳児の両親が三回忌を前に当時を振り返る

 新型コロナウイルスが猛威を振るった2年前の7月26日、金管バンドに夢中だった鹿児島市の男児が命を落とした。小学6年生だった村若悠陽(はるひ)さん=当時(11)。感染による劇症型心筋炎で、20歳未満の死者は県内で初めてだった。再び流行に見舞われている今夏、三回忌を前に両親が初めて取材に応じた。体調が急変した当時の状況を振り返り、「コロナの怖さを忘れないで」と訴える。

 2022年7月25日。3日前に陽性が判明した悠陽さんは、自宅1階の和室で療養していた。6人暮らしで、感染は本人だけ。宿泊施設での隔離ではなく、自宅を望んだ。県内で5~11歳のワクチン接種が始まったのは3月。副反応も心配で、まだ打っていなかった。

 前日夜に嘔吐(おうと)があり、体が痛いと言い出したが、朝の体温は36度台。息苦しさからマスクを外したがった。夕方になり「歩けない」と訴えたものの、なんとか自力で2階へ上がりトイレを済ませていた。

 介助しようと、和室に入った母親の清子さん(48)が体に触れると、冷たさが気になった。「熱を測った?」と尋ねても返事がない。体温計を当てると35度台に。直後「暖房入れて」と寒さを訴えた悠陽さんの体はみるみる硬くなり、呼吸が止まった。わずか数十分間の急変だった。

 救急車を待つ間、清子さんと父親の修さん(63)が人工呼吸や心臓マッサージを繰り返すと、口から黒っぽい血があふれた。鹿児島大学病院で治療を受けたが意識は戻らず、翌朝亡くなった。その日に火葬となり、体に触れることも、骨上げすることもできなかった。

 両親は「持病はなく、子どもは重症化しないと言われていたので、すぐに治ると思っていた」と明かす。医師からも、判断は難しかっただろうと言われた。それでも「もっと早く病院に連れて行っていれば」「ワクチンを打たせていたら」と悔いは消えない。

 5人きょうだいの三男。穏やかな性格で、弟や妹からも「はるちゃん」と慕われた。普段は笑顔が絶えなかったが、金管バンドのパーカッション演奏となると、真剣な表情に一変。迫るコンクールに備え感染予防に心を砕き、楽譜に決意文を貼って練習に励んでいたさなかの感染だった。

 コロナが再び感染拡大する今、両親は呼びかける。「まれなケースかもしれないが、最悪もあり得ることを忘れないで。こんなに悲しい思いは誰にもしてほしくない」