変わる矯正の現場 「拘禁刑」来年6月施行、更生に重点

AI要約

懲役と禁錮を一本化した「拘禁刑」の施行により、刑罰の種類が変更される。懲役受刑者の処遇に柔軟性と更生重視が導入される。

元受刑者の体験を通じて、刑務所内の環境やプログラムについて紹介され、個々の受刑者に合わせた支援の必要性が語られる。

高齢化する受刑者や再犯者の割合が増加し、拘禁刑導入によりリハビリや社会復帰支援が強化されることが期待される。

変わる矯正の現場 「拘禁刑」来年6月施行、更生に重点

 罪を犯した人に科される刑罰のうち、懲役と禁錮を一本化した「拘禁刑」を創設する改正刑法が25年6月に施行される。刑罰の種類が変更されるのは1907年の刑法制定以来初めてとなり、懲役受刑者の刑務作業を義務にせず、受刑者の特性に合った柔軟な処遇による「更生」に重きが置かれる。施行まで1年を切る中、元受刑者や矯正の現場を訪ねた。

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 「信頼してくれた家族を裏切り、自分の体もぼろぼろになった」。県内に住む50代の女性は自身の過去を打ち明けた。

 女性は覚醒剤取締法違反の罪で懲役判決を受け、女性受刑者が入る福島刑務支所で約2年半、服役した。刑務所では常に監視の目があり、番号で呼ばれる日々を「人として扱われている気がしなかった」と振り返る。刑務作業は午前7時50分から午後4時半まで、休憩を除き約8時間。作業中に私語やよそ見をして、刑務官から厳しく注意を受けた人を何人も見てきた。

 気が休まらない日々を送る中、女性は刑務所で用意された薬物を克服する月1回のプログラムに参加した。薬物経験者や薬物脱却を支援する団体の講話を聞いたり、受刑者同士で互いの罪を話し合ったりした。「私よりもひどい人がいるんだ」「薬物を使い続けるとこうなってしまうのか」。それまで「もうやけくそだった」と思っていた人生観が徐々に変わり始めた。

 同じような罪を犯した人でも、受刑者の性質はさまざまだった。だからこそ、「指導も一人一人に合わせた方が立ち直りにつながるのではないか」と女性。今では「刑務官や刑務所での生活には感謝しかない」と前向きに捉えている。

 新たな刑罰となる「拘禁刑」が創設される背景には刑務所内の実態の変化がある。入所者は減少傾向にある一方、入所者の約半数を再犯者が占めている。受刑者の高齢化も進み、福島刑務所でも入所者の約2割が65歳以上だ。拘禁刑の導入で高齢受刑者はリハビリなどを重点的に行えるようになるほか、若年受刑者には学力向上や就労支援に力を入れてスムーズな社会復帰を促すことにしている。