長崎医療センター 4月から精神科病棟を休止 関係者「医療体制崩壊の危機」

AI要約

長崎大の人員不足により、国立病院機構長崎医療センターの精神科病棟が休止中。

精神疾患を持つ患者の受け入れ先が限られ、精神医療体制が危機的状況に。

長崎大は教員不足を改善する取り組みを進め、県内の精神医療の充実を目指す。

長崎医療センター 4月から精神科病棟を休止 関係者「医療体制崩壊の危機」

 国立病院機構長崎医療センター(大村市)の精神科病棟が4月から休止していることが15日までに同センターへの取材で分かった。背景には長崎大の深刻な人員不足があり、派遣を取りやめたのが原因。休止に伴い、精神科病床がある本土地区の医療機関で、身体疾患を発症した精神疾患患者の受け入れが可能なのは長崎大学病院(長崎市)1カ所だけとなり、県内の医療関係者は「身体合併症を診る精神医療体制崩壊の危機」と憂慮する。

 県障害福祉課によると、県内で精神科病床がある医療機関は3月末時点で36。その多くは単科病院で、外科や内科の処置が必要な身体合併症患者の受け入れ可能な総合病院は同センター(病床数33)、長崎大学病院(同39)、五島中央病院(同60)、県対馬病院(同45)に限られる。

 同センターでは3月末まで長崎大からの派遣を含め常勤医3人態勢だったが、派遣取りやめにより1人態勢に。このため4月から精神科病棟を休止し、精神疾患のある急性疾患の患者は可能な限り、一般病棟で受け入れている。精神科医は精神医療の面でサポートする「リエゾン」(連携)対応などに当たる。

 髙山隼人院長は「九州の他の病院に派遣を要請しているが、本年度中の派遣は難しい」と語り、再開のめどは立っていない。措置入院や医療保護入院の患者、多動傾向などで一般病棟での対応が難しいケースでは大学病院に受け入れ先が限られる現状が当面続く。

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 同センターの精神科では昨年度、231人の入院患者を受け入れた(大学病院は210人)。県や県精神科病院協会は、退院可能な患者を早期に地域の医療機関で受け入れるなど大学病院の病床に余裕を持たせるよう下支えしている。県によると、受け入れ調整が難航したとの報告が数件あっている。医療関係者は「根本的な解決には長崎大の体制立て直しが不可欠」と、その動向を注視する。

 県外から昨年着任した長崎大医学部精神神経科学教室の熊﨑博一主任教授は同センターへの派遣取りやめについて、「個人的な事情で大学を辞めるなどした人員を埋めることができなかった」と人繰りの厳しさを説明する。

 熊﨑教授によると、同教室で学生らを指導する助教以上の教員は自身を含め2人のみ。九州の他の国立大は少なくとも7人以上おり、助手5人を加えても指導教員不足は深刻。精神科医を志望する研修医は一定数いるが、当直がある総合病院の勤務医より勤務条件や給与の面から都市部の診療所志向が強いという。教員不足が相まって長崎大での研修が敬遠される悪循環に陥っている。

 立て直しを図るため、長崎大は博士の学位を取得したOBらを非常勤講師として採用するなど、教育研究の充実に向け対策に乗り出している。1月からは県内4病院3診療所で希望すれば学生が実習を受けられる仕組みを構築。多様な環境で学ぶ機会を提供することで多様な視点で本県の精神医療の役割について理解を深めてもらう狙いだ。

 熊﨑教授は「県内外の医療機関などと連携しながら『長崎で学びたい、医療に貢献したい』と思ってもらえるよう取り組みを進め、この危機を乗り越えていきたい」と話した。