【医師確保】相談員の役割に期待(7月20日)

AI要約

首都圏で活躍する医師の県内移住・定住を支援する新取り組みが始まり、相談員制度と併せて本格化している。

医師不足が深刻な医師少数県である本県が、相談員を活用して移住を促進しようとしている。

県内外の医療機関との連携強化や働き方改革を通じて、医師確保と定着率向上に取り組んでいる。

 首都圏で活躍する医師の県内移住・定住を「相談員」が支援する県の新たな取り組みが始まり、今月から活動を本格化させている。本県は人口10万人当たりの医師数が47都道府県で6番目に少ない「医師少数県」だ。近年は増加を続けており東日本大震災前の水準を上回っているものの、過疎地では常勤医が不在となる見込みの診療所もある。本県での勤務に魅力を感じてもらえるよう、相談員制度と併せて施策のさらなる充実を求めたい。

 医療人材のマッチング事業を手がける東京都の企業に委託し、医療関連業務の経験者を相談員として確保した。首都圏に設ける予定のサテライト事務所を拠点に、移住・定住を検討している医師から具体的な勤務条件や希望地などを聞き、説明会や病院・住居の見学会を開いて県内への転入に結び付ける。

 県は2008(平成20)年、「ドクターバンクふくしま」を開設した。県内で勤務したい医師と、受け入れを希望する県内の医療機関がそれぞれ登録する仕組みだが、勤務条件や待遇などが合致しなければ契約に至るのは難しいのが実情だった。

 新たに設ける相談員は医師の相談に丁寧に応じ、希望する市町村には給与水準や待遇面などを助言しながら条件を折り合わせて契約を目指す。県は今年度、10人以上を確保する目標を掲げている。

 相談員は市町村と連携してマッチング事業を進める。ただ、医師を求める民間医療機関と相談員が直接交渉した方がより素早く契約に至るのでは、との指摘も関係者から出ている。柔軟な対応が求められるだろう。

 働き方改革で、医療機関は医師の労働時間の短縮や休息時間の従来以上の確保に迫られている。診療体制の維持には増員が欠かせず、首都圏では医師の囲い込みが始まっているという。「医師少数県」からの脱却には、本県勤務だからこそ資質や技能の向上につなげられる環境を整備する必要がある。

 県内外の医学部生を対象にした県の緊急医師確保修学資金は、卒業後に県内で9年間勤務するのを条件に全額免除になる。勤務期間終了後の定着率をさらに高めるため、相談員制度との連携を図ってはどうか。(渡部総一郎)