子宮頚がん予防…HPVワクチン接種後の不調が生じやすい3つ理由

AI要約

HPVワクチンの接種率が低く、子宮頚がんの予防が進まない現状が報告されている。

HPVワクチンは積極的に勧められているが、接種率はWHOの目標値に達していない。

性教育の重要性や副反応についても言及されており、子宮頚がん予防の取り組みが必要だと示唆されている。

子宮頚がん予防…HPVワクチン接種後の不調が生じやすい3つ理由

 子宮頚がんを予防するHPVワクチンの積極的勧奨が2022年4月に再開されたが、接種率は依然、低いままだ。本紙9月4日号に続き、HPVワクチンについての情報をお届けする。

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 大阪大学大学院の八木麻未特任教授らは7月、積極的勧奨再開後も接種率が回復していないことを米医学誌「JAMA Network Open」(オンライン版)で発表した。

 それによると、個別案内を受けた2004~09年度生まれの女子の累積接種率は平均16.16%、積極的勧奨が再開された世代(2010年度生まれ)は2.83%。22年度の各学年の接種率が23年度以降も維持されたと仮定すると、定期接種終了の年度までの累積接種率は43.16%で頭打ちとなるという。子宮頚がん排除のためにWHOが設定する目標値90%の半分にも満たない率だ。

「日本はかなりのHPVワクチン後進国。ワクチン接種率が高い国では、子宮頚がんはまれながんになりつつあり、子宮頚がんで亡くなる人が今後いなくなるのでは、ともされているのですが……」

 こう言うのは、優レディースクリニック(東京・池袋)の坂田優院長。世界的傾向に反し、日本では子宮頚がんの罹患率及び死亡率は低下せず、毎年約1万人子宮頚がんと診断され、3000人近くが亡くなっている。

 罹患年齢が出産年齢ピークの30~34歳に重なっていることからマザーキラーとも呼ばれる。

 子宮頚がんは主にHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染で発症し、HPVは性交渉で感染する。だから、最初の性交渉の前に接種することが望ましい。

「通常、接種は3回で完了。しかし15歳になる前に接種すると免疫がつきやすいため、2回の接種で済みます」(坂田院長=以下同)

■接種を機会に婦人科のかかりつけ医を持つ

 HPVワクチンゆえの難しさは、まず筋肉注射である点。その年代まで打ってきた注射(皮下注射)と違うので、痛み、恐怖心、不安感で気分が悪くなったり気を失ったりする迷走神経反射を起こす可能性がある。

 次に、対象が思春期世代である点。ワクチンへの恐怖・不安に加え、慣れない婦人科など大人の診療科での接種ということもあり不定愁訴を起こしやすい。

 さらに、十分な性教育を受けていない点。

「学校でも家庭でも性に向き合うことなく来たのに、『性交渉で感染するHPVのワクチン』と言われても受け入れ難い。抵抗感を覚え、不定愁訴につながることもある」

 HPVワクチンは、婦人科に限らず、小児科、内科、皮膚科など、どの科でも接種できるが、坂田院長は「女性特有の心身の悩みがライフステージごとにある。HPVワクチンをきっかけに、生涯伴走してもらえる婦人科のかかりつけ医を持ってはどうか」と提案する。

 HPVワクチンで必ず取り沙汰されるのが、副反応。しかし、積極的勧奨差し控えの原因にもなった接種後のさまざまな症状がHPVワクチンと因果関係がないことは、名古屋市の大規模疫学調査、厚労省の全国疫学調査、海外での膨大なエビデンスで証明されている。

「(前述の)思春期世代であることや性教育の問題などもあり、何らかの症状があればしっかり対応するように、医師会からワクチン接種を行う医師に通知されています。私が接種を行った方では筋肉痛、発熱などがありましたが、難しい症状は経験していません」

 定期接種となるのは小6から高1の女子。1997年度から2007年度生まれの女性も、キャッチアップ接種として来年3月末まで公費で打てる。

「男性もHPVワクチン接種の対象です。男性では、中咽頭がん、肛門がん、尖圭コンジローマの予防になり、女性へHPVを感染させないようになる。HPVワクチンには2価、4価、9価があり、男性への承認は4価です(女性は9価も公費)。定期接種ではないので自費となりますが、補助が受けられる自治体も増えています」

 例えば世田谷区では今年10月1日から来年3月31日まで、住民登録のある小6から高1男子が全額公費負担となる。

 HPVワクチンの接種場所は、自治体のホームページで。最近は、学内で接種を行う大学も増えている。