高齢者の虫歯予防には「フッ素ケア」が効果あり…海外では70%以上激減したとの報告も

AI要約

フッ素は虫歯予防に効果的で、エナメル質の修復や強化、細菌の活動抑制に役立つ。虫歯の主な原因である甘味成分よりもフッ素が有効であり、子供だけでなく、特に高齢者にも重要。

フッ素ケアは歯科医院で高濃度の薬剤を使うことで効果を高め、定期的な塗布が推奨される。自宅でもフッ素配合の歯磨き剤や洗口剤を使用し、効果を持続させることが重要。

フッ素は安全性が高く、毒性があるといわれるが、歯科医院や商品で使用されるフッ素は安全なフッ化物である。安心してフッ素ケアを行い、健康な歯を保とう。

高齢者の虫歯予防には「フッ素ケア」が効果あり…海外では70%以上激減したとの報告も

 近年、口腔ケアの重要性がクローズアップされる中、虫歯の予防法として「フッ素(フッ化物)」があらためて注目されている。子供が行うケアというイメージがあるが、じつは大人、とりわけ高齢者に有効だという。小林歯科医院の小林友貴院長に詳しく聞いた。

 フッ素は天然に存在する元素のひとつで、土や水など自然界のあらゆるところだけでなく、食べ物や飲み物にも含まれている。すべての動物や植物の体内にも含まれ、成人では2.6グラム程度のフッ素が存在している。

■虫歯の予防や進行を防ぐ働きは主に3つ

 そのフッ素には虫歯を予防する効果があり、世界的にも広く認められている。

「フッ素に認められている虫歯の予防や進行を防ぐ働きは、主に3つあります。まずは①エナメル質の修復を促進する働きで、歯の表面を覆っているエナメル質が溶けてなくなってしまった箇所を修復します。唾液に含まれるカルシウムやリン酸を歯に取り入れて再石灰化するため、初期虫歯なら治癒も可能です。次は②歯質を強化する働きで、歯に塗布するとフルオロアパタイトと呼ばれる結晶構造を作り、表面のエナメル質を酸に溶けにくい性質に変えて虫歯になりにくくします。さらに③細菌の動きを弱める働きで、虫歯菌の活動を抑えます」

 こうしたフッ素の虫歯予防効果は、虫歯の大きな原因となる砂糖などの甘味成分の摂取を制限することよりも有効とされている。実際、水道水に含まれるフッ素を適正な濃度に調整したり、フッ素ケアを普及させた海外の国々では虫歯が50~70%以上も激減したとの報告もあるほどだ。

 フッ素は、乳歯でも永久歯でも生えたての歯で多く取り込みやすいため、より効果が期待できる生後6カ月から15歳くらいまでの子供に塗布が勧められるケースが多い。乳幼児に年6回フッ素塗布を行うことで乳歯の虫歯が減少し、虫歯がまったくない3歳児の割合が増加したという研究もある。とはいえ、大人でもメリットは大きく、とりわけ高齢者には有効だという。

「年をとると、歯茎が痩せて徐々に下がっていきます。10年で2ミリ下がるといわれていて、そうなると歯根が露出してしまいます。歯根は、酸に溶けにくいエナメル質で覆われていないため、虫歯になりやすい部分です。虫歯菌が大量の酸を産生する最大の要因である砂糖ではなく、味噌汁のような食品でも虫歯につながってしまいます。そうしたリスクを軽減させるために、フッ素ケアが効果的なのです」

■歯科医院では高濃度な薬剤の塗布が可能

 いまはフッ素を配合した歯磨き剤や洗口剤が数多く販売されていて、手軽に購入できる。しかし、市販の歯磨き剤や洗口剤に含まれるフッ素の濃度は1500ppmまでと定められていて、900~1450ppmのものが多い。一方、歯科医院で取り扱うフッ素塗布剤の濃度は9000ppmで、それだけ効果が高くなる。フッ素ケアを行うなら、定期的に歯科医院に通って実践するのがおすすめだ。

「塗布したフッ素の効果持続期間は約3カ月間とされていて、定期的に繰り返し塗布する必要があります。通常なら3~6カ月、歯茎が下がり歯根が露出していて虫歯リスクが高い方であれば月1回程度、歯科医院でのフッ素塗布を行うといいでしょう。歯科医院によって異なりますが、条件に該当してフッ素塗布が保険適用になるケースでは、治療費の目安は1000円程度です」

 歯科医院での定期的なフッ素ケアにプラスして、自宅では市販されているフッ素配合の歯磨き剤や洗口剤を毎日使って、効果を持続させたい。

「ブラッシングを終えた後、フッ素を過剰に洗い流さないための工夫が大切です。フッ素配合の歯磨き剤をたっぷり使って口腔内全体に行き渡らせ、10~15ミリリットルと少なめの水で5秒間ほど1回だけうがいして吐き出す方法が推奨されています」

 フッ素に関しては、毒性があるため危険だという声もあるが、歯科医院や歯磨き剤で使われているフッ素は安全性が高いフッ化物なので心配はない。安心してフッ素ケアを実践し、健康な歯を手に入れたい。