南海トラフ地震、富士山噴火を「正しく恐れる」方法

AI要約

宮崎県での地震により政府が注意報を発表し、災害用品の売り切れが続く中で、鎌田浩毅先生の新刊が注目を集めている。

鎌田先生は地球科学的な視点から自然災害に対する適切な姿勢を提案し、長尺の目を持つことの重要性を強調している。

地球の歴史やプレートの影響を通じて、大地変動が定期的に起きることを理解し、恐れるだけでなく興味深い視点を持つことが求められている。

南海トラフ地震、富士山噴火を「正しく恐れる」方法

今月8日の宮崎県での地震により、政府は「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を招集し、巨大地震注意報を発表した。

近所のドラッグストアではペットボトルの水が箱ごと売り切れ、米も無く、不安な日々を送ったが、ようやく騒ぎもおさまって来た。

私達は予知が難しい地震に対し、災害用品を買う以外に、どんな姿勢で対処していたら良いのだろう。

地震の度に感じる不安を、水や食料の購入で払拭する以外に方法は無いのか、そんな疑問に答えてくれるのが、週刊ポストの地震特集でもおなじみ、京大人気ナンバーワン教授の鎌田浩毅先生の新刊「首都直下 南海トラフ地震に備えよ」(SBクリエイティブ発刊、定価990円)である。

鎌田先生は地球科学を専門とする科学者で、首都直下型地震はいつ起きても不思議ではないこと。

そして、2030~40年の間にマグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震が西日本を襲い、これら巨大地震に関連して富士山が噴火する可能性があると述べている。

鎌田先生はこうした自然災害に対して、「正しく恐れること」を提唱している。正しく恐れるとはどういうことか、新刊書を基に解説してみよう。

近年、日本だけでなく世界中で自然災害が増えているかを、地球科学者特有の視座で捉える有効な方法論があると鎌田先生は述べている。それが「長尺の目」だ。

地球科学的なものの見方である「長尺の目」をもつことで、地球や自然との適切な付き合い方が見えてくると鎌田先生は主張している。

そして、長尺の目をもてば、大規模自然災害も自然の摂理のひとつであり、むやみに恐れずにいられる。そして、正しく恐れることが可能になると言う。

地球上で地震や火山の噴火が発生するのは地球上を覆うプレートによるものだ。プレートは畳のように平たく硬い岩盤で、地球の表面を2億年もの間、一年につき5~10cmだけ動いてきた。

日本列島は4つのプレートがせめぎ合い、地震を引き起こす。このせめぎあいは100年から1000年に一回の割合で起き、その都度、大きな地震となって現れる。

地球の誕生から今まで約46億年、宇宙の歴史まで遡れば137億年、そして、プレートの影響で地震が起きるのはたった100年から1000年に一度だ。

今、私達は大地変動の時代を迎えてしまったが、46億年の地球の歴史からすれば、100年に一度という数字はあまりにも短い。

鎌田先生はこうした長尺の目をもてば、大規模災害も定期的に繰り返される地球の営みの一つであることが理解できる。

「私は本書で、時間的にも空間的にも大きな長尺の視点を持つ生き方の提案を、みなさんにしたいと思います。日本列島では今後も引き続き天変地異が押し寄せてきます。大地変動の時代はすでに始まってしまいました。

しかし、それをこういう物としてただ怯えるのではなく、長い目で興味深い歴史と地理と自然の数々を発見していくような視座を持っていただきたいと思うのです。

それこそが、我々が先祖から受け継いだ『しなやかな生き方』ではないでしょうか」と新刊書で教えてくれた。

後編では、日本列島という変動帯の自然と向き合った生活スタイルについて鎌田先生からアドバイスをもらった。

著者・鎌田浩毅

理学博士。1955年生まれ。筑波大学附属駒場高校卒業。東京大学理学部地学科卒業。通産省(現・経済産業省)を経て1997年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。2021年より京都大学名誉教授および京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授。

主な著書に『火山噴火』(岩波新書)、『富士山噴火と南海トラフ』(講談社ブルーバックス)、『揺れる大地を賢く生きる 京大地球科学教授の最終講義』(角川新書)、『知っておきたい地球科学』(岩波新書)、『京大人気講義 生き抜くための地学』(ちくま新書)、『M9地震に備えよ』(PHP新書)がある。Youtubeで公開の「京都大学最終講義」の再生回数は106万回を超えている。新刊「首都直下 南海トラフ地震に備えよ」(SBクリエイティブ発刊、定価990円)

文/柿川鮎子