ギャルメイクでバズる信州大学の天文物理学者 離婚して「チラシ配り」から始めた日本のキャリア

AI要約

高校時代から自分の学びたいことを追求し、勉強に対する独自のアプローチをとってきたBossB(ボスビー)さん。日本を出てアメリカに渡り、天文物理学の博士号を取得した彼女のエネルギッシュな生き方に迫る。

アメリカでの学生生活では、自由な環境で自らの興味ややりたいことに没頭する一方で、その裏には失敗や責任を負うことへの重みも感じていた。

勉強したい分野が明確でなかったBossBさんは、大学や大学院で少し手に職を持つために天文物理学を専攻し、奨学金の支給などの条件も影響して選んだという経緯があった。

ギャルメイクでバズる信州大学の天文物理学者 離婚して「チラシ配り」から始めた日本のキャリア

TikTokをはじめとするSNSで、70万人近いフォロワーを持つ天文物理学者、BossB(ボスビー)さん。金髪に日焼け肌というギャル風メイクのいでたちで、物理学や天文学に関連するさまざまなトピックを解説する動画がバズって人気を集めています。「ピース」の決めぜりふで終わる動画では、物理や宇宙を語りながら、自由な生き方へのメッセージも伝えています。日本の高校を卒業後に単身渡米、名門大学院で博士号を取得したパワフルな生き方を聞きました。

――BossBさんのエネルギッシュな生き方は、一体どこから始まったのでしょうか。

通っていた高校は、地元の進学校でした。成績も良かったのですが、高2くらいになると、もっと豊かな学びをしたくなったというか、いろいろなテーマについて議論を交わしたり、「自分は何のために生きているのか」といった哲学的な問いについて考えたりしたいと思うようになったんです。でも、授業で先生が話すのは、教科書に書いてあることばかり。「こんなのは自分がしたい学びじゃない」と落胆し、高校3年の初め頃から学校に行かなくなりました。担任の先生からは「学校に来なさい」と言われましたが、「私は教科書を読むだけでもテストでいい点数を取れます。次の模擬試験でトップレベルの成績が取れたら、もう学校には行きません」と宣言して、実際にいい成績が取れたので、それ以降はほとんど登校しませんでした。

――高校卒業後はニューヨークの大学に進学し、その後、名門コロンビア大学の大学院で天文物理学の博士号を取得しました。なぜ日本ではなく、アメリカの大学に進んだのでしょうか。

アメリカに行った理由は、勉強したかったからというより、まずは日本を出て探検したかった。そして世界一の大都会、ニューヨークを楽しみたかったからです(笑)。中1のときにアメリカでホームステイをしたことがあって、その頃から洋楽やハリウッド映画などのアメリカ文化に興味がありました。マイケル・ジャクソンが黒い革ジャンを着て、ニューヨークの地下鉄の駅で踊るミュージックビデオを見て、「こんなかっこいい世界があるのか」と。ちょっと怪しい雰囲気の世界観がすごくクールで、ドキドキしたのを覚えています。

――アメリカでの学生生活は、いかがでしたか。

パンクロックのライブイベントを企画したり、詩やエッセーをプリントして配布したり、いろいろなことをやりました。自分のやりたいことができるようにはなりましたし、納得がいく生き方もできるようになりましたが、何もかもがお花畑のように楽しかったわけではないですよ。新しい世界を探検するなかではつらいこともありましたし、失敗もたくさんしました。

何でも自由にできるということは、裏を返せば、自分でやったことに対しては責任を負わなければいけないということです。そういう自由の重みのようなものも、しっかり感じました。

――大学や大学院での勉強は、かなり大変だったのではないでしょうか。

宇宙といえば宇宙工学だと思い、初めに進学したのは工科大学でしたが、私はエンジニアや機械を扱うとか、そういうタイプではないと気づき、途中からは心から学びたいと思った物理学や哲学、女性論の授業を中心に受講しました。とは言っても、そもそも勉強したいと思ってアメリカに行ったわけではないので、必要最小限のことをこなす感じでした。アメリカの大学は特に出席を取ったりしないので、テストでいい点数を取れば進級も卒業もできます。そんな感じだから、卒業が近づいても自分が何をやって生きていくのかまだはっきり決まっていなくて、卒業後の1年は、ほかの国を旅しようと思いました。それからまあ、何とかなるだろう、と。

――そう思っていたら、本当に何とかなっちゃったわけですか(笑)。

そう、何とかなっちゃったんです。大学院に進学したのは、手に職をつけておいたほうがいいんじゃないかと思ったからで、専攻を天文物理学にしたのは、フルで奨学金が出たうえ、月々20万円の支給があると聞いたからで、それほど深く考えたわけではありません。