暑すぎて運動できない、格差が広がる…気候変動を伝える新聞記者たちが語る「覚悟」

AI要約

2024年夏は1898年以来最も暑い夏となり、気象庁が発表した報告によると、地球温暖化の影響が顕著であることが示された。

メディアの気候変動報道を強化するための取り組み〈Media is Hope〉に賛同した各メディアの座談会が行われ、記者たちが記事作りにおける意識や課題について議論した。

東京新聞の記者は、気候変動対策のためには社会システムの変革が不可欠であり、政策決定における重要性を訴えながら、民主主義の力に期待を寄せて取材活動を展開している。

暑すぎて運動できない、格差が広がる…気候変動を伝える新聞記者たちが語る「覚悟」

「令和6年7月以降の顕著な高温と7月下旬の北日本の大雨の特徴と要因について」

2024年9月2日、気象庁から発表されたのはこういうタイトルの文書。それによると、2024年の夏は2023年に続き、1898年に統計を取り始めてから最も暑い夏になりました。7月下旬の大雨のあとも、豪雨や台風の影響は大きく、「地球温暖化はない」「気候変動なんてない」とは言えない現状があります。

国連は地球温暖化による被害を食い止めるために「1.5℃の約束」というキャンペーンを打ち出しましたが、2024年の夏を見ると、すでに1.7度を超えた高さになっているとか。だからこそ現実を知ったうえで、自分たちにできることをやっていく必要があります。

そこで2023年に引き続き、メディアの気候変動報道を強化することを目的とした〈Media is Hope〉の取り組みに賛同した各メディア(東京新聞(中日新聞社)、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日刊工業新聞社)の記者の皆さんと座談会を実施。

ここまで「読者から反響のあった記事」や「Webだけでなく紙面で取り上げることの意味」、「多くの人に読んでもらうために記事作りで意識していること」などについて語ったことをお送りしました。

ラスト4回目は、ここまで取材してみて「もっと報じるべきだと感じたこと」や「今後気候変動について記事を書くうえで持つといい視点」などについて率直な言葉をお届けします。

座談会に参加したメンバー(アンケート回答順)

東京新聞(中日新聞社)・福岡範行さん、朝日新聞・香取啓介さん、毎日新聞・八田浩輔さん、日刊工業新聞社・松木喬さん、読売新聞・中根圭一さん、東京新聞(中日新聞社)・押川恵理子さん

オブザーバー/Media is Hope・名取由佳さん、西田吉蔵さん

司会/FRaUweb編集部

――気候変動に関し、これから報じたいこと、報じる必要性を感じたことがあれば、可能な範囲で教えていただけますでしょうか?

東京新聞・福岡範行さん(以下、東京新聞・福岡)地球温暖化を抑えるためには「社会システムの変革」が必要だと捉えています。そこで個人的にも、各地で開かれている気候市民会議※にできるだけ足を運んで取材しています。

※気候市民会議:無作為に抽出された市民が全6回程度の会合に参加し、科学的知見を得て、対話と熟慮と投票を繰り返し、気候変動対策をまとめ、提言するもの

(引用:国立環境研究所)

というのも、すでに気候変動対策として取れる選択肢はあるのに、それらがなかなか採用されてきていないという現状が日本ではあると感じているからです。それは“政策をどう決めていくのか”というところが大きく関わっているのでは、という問題意識を持っています。

正直なところ、実際これを書くことでたくさんの反響をいただけるわけではないと思います。しかし、以前他社の気候変動対策を取材してきた先輩に相談した際にも「民主主義とか政策決定の話は気候変動対策を大きく変える、キーになる可能性があるテーマであり、意思決定が変わることで滞っていた気候変動対策が一気に進む可能性があると思っている」と言ってもらえました。政策決定のあり方を変えるのはなかなか難しいとは思うのですが、コツコツ書き続けることで、多様な立場の経験や意見が反映される形で公正な対策がすすめられる日本になっていくはず。その力になれたらなと思っています。