専門医が教える、60代後半で3人に1人がかかる「加齢性難聴」を予防する方法

AI要約

シニアの年代に入ると、難聴が増える要因や加齢性難聴について述べられている。

難聴が認知症の危険なリスク因子であることやそのメカニズムについて説明されている。

加齢性難聴を予防するための方法として、内臓脂肪の減少や適切な栄養摂取の重要性が指摘されている。

専門医が教える、60代後半で3人に1人がかかる「加齢性難聴」を予防する方法

文/鈴木拓也

シニアの年代に入ると、難聴を自覚する人が増える。

難聴の原因はさまざまであるが、この年代で最も多いのが加齢性難聴だ。これは、加齢によって耳の聞こえが次第に悪くなっていくというもの。60代後半では3人に1人、75歳以上になると3人に2人がかかるという。

その原因は、耳の奥の内耳にある、音(空気の振動)をキャッチして脳に情報を伝える有毛細胞の衰え。一旦衰えると元に戻らないので、難聴は年齢とともに進んでいくことになる。

「年をとって、多少耳が悪くなるのは仕方ない」と、鷹揚にかまえている人もいるかもしれない。

しかし、実は「難聴は認知症の最も危険なリスク因子」でもある。

そう指摘するのは、JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井正則医師だ。

石井医師は著書『70歳から難聴・耳鳴り・認知症を防ぐ対処法』(さくら舎)のなかで、軽度の難聴でも、認知症発症リスクは難聴でない人の2倍に高まるとし、理由を次のように記す。

<難聴になると、音の情報自体が入ってこなくなるため、それだけ聴覚のネットワークも使われなくなります。しかも、難聴によって会話が聞き取れなくなって人とのコミュニケーションが減ると、音のほかにもさまざまな脳への刺激や情報量が激減し、いろいろなネットワーク機能が弱くなったり、使われない細胞が脱落して脳が萎縮したりします。(本書150pより)>

こうして脳の活動が全体的に低下し、認知機能が弱まって、認知症の発症につながる。また、相手の話が聞こえにくくなって、人とのコミュニケーションが億劫になり、社会的孤立になるリスクもある。

「たかが、耳がちょっと悪いだけ」とは侮れないのだ。

加齢性難聴は、年をとれば誰でも起きる可能性があるが、そのリスクを減らすことは可能だと、石井医師は説く。

1つは、余分な内臓脂肪を減らす。

内臓脂肪が多いと動脈硬化になりやすく、血液の循環が悪くなる。そのため、耳に十分な血液が行き届かなくなり、その働きは低下していく。

また、高血圧症や糖尿病といった生活習慣病も、動脈硬化のリスクを高め、結果として耳が悪くなる。

その対策として石井医師が挙げる1つが、食生活の改善。

例えば、十分な量のマグネシウムをとる。

マグネシウムは日本人が不足しがちなミネラルだという。これが不足すると、ブドウ糖の代謝が悪くなって、中性脂肪として蓄積されやすくなる。また、糖尿病などの生活習慣のリスクも高める。

そこで、そば、バナナ、のり、ひじき、豆といった、マグネシウムを多く含む食材を、普段の食事に加える。また、マグネシウムとペアになって働くカルシウム、くわえてビタミンDや亜鉛も積極的にとることがすすめられている。