半年前に夫が胃がん宣告…私は添乗員の仕事を続けてていい?という相談に僧侶、名取さんが回答

AI要約

仏教の教えを通じて、64歳女性の夫の胃がん宣告に対する悩みを解決するためのアドバイスが提供される。

夫の意向に寄り添いつつ、自らの生活を大切にし、添乗業務を続けても良いことが示唆される。

がん患者のプライドや自己肯定感を尊重することが、夫婦関係の強化につながるというポジティブなメッセージが伝えられる。

半年前に夫が胃がん宣告…私は添乗員の仕事を続けてていい?という相談に僧侶、名取さんが回答

読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は64歳女性の「夫が胃がん宣告…留守がちな仕事をしている私は、このままの生活を続けていていいのでしょうか?」という相談に、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く住職・名取さんが回答。

44年勤めた会社を昨年3月末で退社して、7月から派遣社員の添乗員として働き始め1年になりました。

今年1月に、夫が胃がんを宣告され転移がみられるため化学療法を受けています。半年で30kgほど体重が落ちて別人のようになった夫ですが、自営の仕事は続けています。

私は家を留守にしがちな添乗業務を続けていますが、このままでいいのかな?とも思ったりします。

不安な言葉は一切言わない夫ですが、強がりでないのか……猫との留守番は心細くないのか……。したいことをしている私はわがままなのかと思ってみたりもします。

(64歳女性・belleさん)

「私はがんの宣告を受け、転移もあって、半年で30kgも体重が落ちている中で仕事をしているのに、したいことをしている妻はわがままだ」……belleさんの夫は、そのように考える人でしょうか。

あるいは、病気で弱気になればそう考えることもあるかもしれないですが、単に病気がそう思わせているかもしれないと、belleさんは思われていらっしゃるのでしょうか。

どちらの場合でも、belleさんの対応は同じになるでしょうが、belleさんの心の持ち方によって、夫やbelleさんのストレスは大きく異なると思われます。

「病気になんか負けてたまるか」「今まで通り普通に生活するのが一番いい」「やりがいのある添乗員の仕事をしている妻の負担になりたくない」など、夫が何かの理由で働く意欲があり、実際に働けるなら、belleさんは今のまま、派遣の添乗員を続ければいいでしょう。

40年ほど前に月に一度、5年間、「がん患者、家族と語り合う集い」(仏教情報センター主催、現在は開催されていません)に参加していました。

がんの告知が一般的でなかった時代です。自分の病気なのに、本人には本当の病名は知らされず、周りは知っていて、もっとも信頼できるはずの家族が本人に嘘をつき通す、そんな時代です。

参加者は患者本人、患者の家族、医師、看護師、僧侶でした。私は母(57歳)をがんで亡くした家族として、そして一人の僧侶として参加していました。

参加していた患者の多くは、自分ががんであること(命が長くないこと)を知っていて、自分の体験を参考意見として語る勇気を持っている人たちでした。告知から治療を経て、その勇気を出すまでには、大変な苦悩と葛藤があったことは想像に難くありません。

多くの患者が言ったのは「自分たちは普通の人間で、がんになったからといって腫れ物に触るような、特別な接し方、扱い方はしないでほしい」ということでした。

がんを受け入れられるようになれば、そのような思いにたどりつくのかもしれません。

belleさんの夫もそのように考えている可能性が大きいと、私は信じたいです。もしそうなら、そのような夫の願いを無下にしないことが、夫のQOL(Quality Of Life)にもつながると思います。

※Quality Of Life:「生活の質」「生命の質」。患者の身体的、精神的な苦痛の軽減、社会的活動を含め活力、生きがい、満足度などの総合的な意味を含む考え方です。

働けるうちは働き、妻には仕事をしてもらうという夫の意向に寄り添うことで、夫婦の関係も深まり、belleさん自身のQOLを高めることにもなるでしょう。

そのような心積もりでbelleさんが添乗の仕事を続けるなら、わがままとは言えないと思います。