「普通のおばさんが隊長、特別なことではない」女性初の南極地域観測隊隊長がみせる“自身の姿”

AI要約

原田尚美さんは東京大学教授であり、南極地域観測隊隊長を務める日本初の女性である。彼女はフィールドワークに興味を持ち、地球科学への情熱から南極への道を切り拓いてきた。

南極観測隊では隊員90人と同行者20人の計110人で任務に当たる。女性の参加率が増えてきており、原田さん自身も33年前に初めて南極に行った時は女性隊員が彼女1人だったが、今回は25%の女性参加率となっている。

原田さんの南極への興味は高校時代に始まり、地球温暖化の問題やフィールドワークを通じて自らの研究への情熱を深めてきた。彼女は自らの道を切り開く冒険心と積極性を持って活動している。

「普通のおばさんが隊長、特別なことではない」女性初の南極地域観測隊隊長がみせる“自身の姿”

 日本女性として初めて、さまざまな道を切り開いた人物をクローズアップする不定期連載。第3回は女性として初めて南極地域観測隊隊長を務め、東京大学大気海洋研究所教授でもある原田尚美さんの冒険心に富んだ半生について語ってもらった。

「私はどちらかというと調整型のリーダーで、個々の仕事がうまく進んでいくよう取り計らうタイプ。コミュニケーションを取りつつ、みんなの背中を押していけたらと思っています」

 と言うのは、第66次南極地域観測隊隊長を務める東京大学教授の原田尚美さん(57)。1956年の第1次隊発足以来、女性が隊長を務めるのは初めてで、今年12月5日~来年4月5日までの4か月にわたり南極で任務にあたる。

「第66次は隊員90人と、旅費等を自身で負担する同行者20人の男女計110人が参加します。女性は25%で、4人に1人の割合。33年前に初めて南極に行ったとき、女性は私1人でした。だから着実に増えてはいて、おそらく今までで一番多いと思います。そういう時代になりました」

 出身は北海道苫小牧市。国家公務員の父とパート勤めの母、妹の4人家族で育つ。南極とは無縁の家庭で、「だからこんな方向に進むとは、という感じです」と振り返る。

 地球科学への目覚めは高校時代。当時は地球温暖化という言葉が使われ始めたころだ。

「教育実習の先生が地球科学を学んでいて、そんな分野があるのだと知りました。地球のことを研究してみるのも面白いかもしれないと思って」

 弘前大学の理学部地球科学科へ進学。そこで南極滞在経験を持つ指導教官と出会い、フィールドワークに興味を抱いた原田さん。名古屋大学の大学院へ進み、南極行きを視野に研究を続けている。

「名古屋大には何人も南極観測隊員を出している研究室があり、南極に行くのに近いのでは、という思いがありました」

 しかしチャンスはなかなか訪れず、フィールドワークに出向いたのは博士前期課程2年目になってから。指導教授に直訴し、東京大学大気海洋研究所の研究航海に参加。初めての航海が、その後の人生を大きく変えた。

「赤道でプランクトンや海底の堆積物を採ったり、いろいろなサンプリングを経験しました。ただ私は就職が決まっていたので、後輩たちに採取したサンプルの分析を託すことになる。だけどやっぱり自分で分析したかった。先生にそう伝えたら、“でも君、就職じゃない”と言われたけれど、“就職やめます!”と船の上で宣言しました(笑)」