「会社のサーバー潰すわ」チャットのやり取りがバレて自主退職に追い込まれた社員の末路
社長が不適切なチャットを理由に社員に退職を促し、2名の提出した退職届について争いが生じた事件を解説。
社員AとX1さん、X2さんが不適切なチャット内容を交わしていたことが明らかになり、退職届提出後に取り消したいと主張。
裁判の行方や不適切な行動について具体的な例を挙げながら、事件の背景を明らかにする。
こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。
提出した退職届を取り消せるのか?という事件を解説します(東京地裁 R4.11.2)
―― 社長、何をブチギレているんですか?
社長
「社員同士でこんなチャットをやりとりしてたんですよ!」
社員A
「会社のサーバー潰すわ」
X1さん
「社内共通から徐々に行なってください」
社員A
「数年で会社が潰れてほしい」
X1さん
「とりあえずオミクロン?ばら撒いてくださいw」
うぉっ。おだやかじゃないですね。ほかにも不適切なチャットがあったため、社長は自主退職を促しました。
社長の求めに応じて社員は退職届を提出したんですが、その後、気持ちが変わったんでしょう。「退職届の提出を強要された」などとして提訴。
裁判で社員は「強迫されたので退職を取り消せるはずだ」などと主張しました。
果たして、退職を取り消せるのか?裁判の行方を見ていきましょう。
※ 実際の判決を基に構成
※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換
※ 争いを一部抜粋して簡略化
▼ 会社
バッグ・帽子・手袋等の製造および輸出入販売業
退職届を提出したのは以下の2名。
▼ X1さん
商品企画、デザインなどの業務を行なっていた。
▼ X2さん
ECサイトのデザイン・店舗のポップアップ広告の作成などの業務を行なっていた。
不適切なおしゃべりが、わんさかでてきました。以下のとおり。
・X1さんとX2さんの会話 A4印刷で559ページ
・X1さんと社員A 131ページ
・X2さんと社員B 407ページ
・X2さんと社員C 454ページ
これは約2か月間でのおしゃべりの量です。しゃべりすぎです。
以下、一部抜粋します。
■ X1さんの場合
以下は、社員Aが辞めようとしていた時にX1さんとチャットでやりとりした内容。
社員A
「会社のサーバー潰すわ」
「あ、それやと他の人もこまるな」
「●●のパソコン潰すわ」
「後、●●家も全部」
X1さん
「社内共通から徐々に行なってください」
社員A
「数年で会社が潰れてほしい」
X1さん
「Aさんが潰してください」
「とりあえずオミクロン? ばら撒いてくださいw」
■ X2さんの場合
自分の部署に配属されることになった同僚にムカついていた模様。なぜならその同僚が転職のための準備をしていると感じたから。
するとX2さんは社員Bへ、同僚への当てつけとして「macブッ壊しとく」「イラレ(画像処理ソフトの略称)消しとくわ」と送信。また、「週次の時、脛蹴っとくわ」「脛けってとんこ(太ももの方言)に踵落とししとく!」と送信。
仕事に無関係なサイトを閲覧
不適切なチャットだけではありません。以下の問題行動も明らかになりました。
■ X1さん
飲食店のウェブサイトやプライベート旅行のための宿泊先候補のウェブサイトを閲覧
■ X2さん
初詣の屋台情報やプライベートな東京ディズニーランド旅行の予約に関するウェブサイトを閲覧。これらのウェブサイトを閲覧する際には、閲覧履歴が確認しづらいシークレットモードを利用していた。