中学受験、第一志望受験日午後の「移動競争」。直後の受験プランに影響する「結果」

AI要約

息子の中学受験については、親のエゴに感じていたが、最終的には息子から良かったという言葉を聞いて安心している。

受験当日、第一志望の慶応が失敗し、午後に都市大附属の受験を決める。移動中に息子の様子を気にしながら試験を乗り越える。

都市大附属の受験を通じて、息子は次の試験に向けて頑張る姿勢を見せ、受験のプロセスを経て成長している。

中学受験、第一志望受験日午後の「移動競争」。直後の受験プランに影響する「結果」

「勉強嫌いの息子の中学受験は、完全に親のエゴでした。でも最後に『中学受験をしてよかった』という息子の言葉を聞いてホッとしています」

こう語るのは、森将人さん。慶應義塾大学を卒業した元大手証券ディーラーだ。

どのように「親のエゴ」と感じたのか。そして子どもとどのようにコミュニケーションを取り、「やってよかった」という言葉が出てきたのか。

森さんが率直につづる連載第9回は、6年生の2月。第一志望の慶応普通部の受験日のことを伝えている。本番直前でナーバスになり、母子でトラブルがあったあとに迎えた「本番」。午後は都市大附属を受験することに決め、受験をするのに間に合うかどうかも含め、夫婦で協力し合って策を練っていた。

第一志望を慶応、第二志望を立教新座とし、立教新座は補欠合格。2月1日の午後の学校が受かるか否かで、2日以降の受験のやり方も変わってくる。

まずは三田にある慶応から、成城にある都市大附属までの移動が重要だ。

その結果は……。

東急東横線に乗り、休む間もなく武蔵小杉で南武線に乗り換える。ちょうど席が一つ空いたので、孝多を座らせた。やはり疲れてる様子だ。心配していたのはトイレだった。途中で寄る時間はないし、次の試験会場に到着したらすぐにテストがはじまってしまう。

「大丈夫だよ。何回も行ってきたから」

待ち時間があったので、その間に済ませてきたという。体育の実技はボール投げだった。孝多の得意な領域だ。面接での質問もオーソドックスなものばかりだったようだ。具体的な質問は教えてくれなかったが、次のテストに集中するため、それ以上は訊かないことにした。

登戸で小田急線に乗り換えると、次が成城学園前だ。窓から見える多摩川沿いのグラウンドを、孝多はぼんやりと眺めていた。

「終わったら、サッカーやりたいな」

「あと数日で試験も終わるからな。そうしたら遊び放題だぞ」

都市大付属中学校は、大学付属だが進学の実績もある難関校だ。偏差値でいうと、50台半ばクラスだろうか。孝多にとって志望校とはいえないが、第2志望の立教新座が補欠だっただけに合格という実績が欲しい。そうすれば、2日以降の受験校は本当に行きたい学校に絞ることができるからだ。

2月1日の午後に受験できる学校を調べている過程で浮かんできた学校なだけに、学校訪問もしていない。試験問題に慣れていないのが不安だった。

集合時間の3時半はすでに過ぎ、4時10分のテスト開始時間まであと10分を切っている。電車を降りて改札の先に妻の顔が見えると、孝多はぼくの手からリュックサックを取った。何人か改札を走っていったのは、同じ慶応受験組だろうか。後は妻に任せて、ぼくは家に帰った。