江原啓之「夫の介護を娘が手伝いたいと言ってきた。一度独立した子どもとは、別々に暮らしたほうが揉め事が少ない」

AI要約

夫が病気で介護中の母親が娘に愚痴をこぼすと、娘が自宅に戻って手伝う提案をする。幸せぐせは、娘に断ること。先見の明を持ち、家族内のトラブルや相続問題を避けるために理性的に対策を考えるべきだとアドバイス。

介護を受ける場合でも独立を保ち、関係性を緩くした方が家族全員にとって幸せ。娘が手伝いたい場合はサポートを別途受けるべきで、家族内のトラブルを避けるように準備と覚悟を持つべき。

感情に流されず、将来の状況を想定して適切な支援を考えることが重要。友人や専門機関のサポートを活用しつつ、ゴタゴタを避けるために冷静な対応が必要。

江原啓之「夫の介護を娘が手伝いたいと言ってきた。一度独立した子どもとは、別々に暮らしたほうが揉め事が少ない」

スピリチュアリストとして、さまざまな角度から読者のお悩みに答え、生きる指針を示してくれる江原啓之さん。現在は熱海に在住し、ていねいな暮らしをしながら日々「生きる上で大切なこと」を発信し続けています。『婦人公論』のリニューアルにあたって始まった新連載「〈幸せぐせ〉を身に着けよう」。第32回は「夫が病気になり介護中。娘に愚痴ると、自宅に戻って手伝うとの提案が」です。

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Q 夫が病気になり介護中。娘に愚痴ると、自宅に戻って手伝うとの提案が

A)ひとりでは不安だったし、助かるので受け入れる

B)娘には迷惑をかけたくないので断る

◆先見の明をもつ

病気の夫を自宅で、しかもひとりで介護しているとなると何かと大変でしょう。すでに独立し、離れて住む子どもたちに愚痴のひとつも言いたくなる気持ちはよくわかります。そんなとき、子どもから「お母さん、そんなに大変なら私、実家に戻るよ。仕事には実家からでも通えるし、少しは手伝えると思うから」と言われた、という状況です。あなたがこの母親の立場だとして、思いがけない提案に、どんな選択をするのが幸せぐせだと思いますか?

ずばり、幸せぐせはBです。「戻ってこなくてもいいのよ。たまに話を聞いてくれたら、それで十分」と伝えるのがベスト。

たしかに、ちょっと手伝ってくれる人が身近にいれば、精神的にも肉体的にも助かるでしょう。介護を背負うのはそれほどしんどいこと。けれど、独立した娘が介護を理由に実家に戻ってくるのは賛成できません。幸せぐせのポイントは、先見の明をもつことだから。Aは今のつらい、苦しい感情に流されているだけで、先々を考えていないように見受けられるのです。

◆理性的に対策を

そもそも娘が実家に戻ってきた後、どんなことが起こる可能性があるのか想像できていますか? もし娘のほかに子どもがいたらどうでしょうか。介護の末に夫が亡くなったとします。そうしたら相続で揉めませんか? 実家に戻ってきたといっても娘には仕事もあるし、実際にはそれほど介護に参加していなかった。それでも「私はお父さんの介護を手伝ったんだから、多くもらうのは当然」などと言い出す可能性がないとは言えません。「わが家には争うほどの財産はない」と思っている人こそ、心してください。相続で揉めるのは、ごく普通の家庭が多いそうです。ですから、「うちは大丈夫」はありえないのです。

たとえ子どもが娘ひとりという場合でも安心とは言いきれません。娘が結婚していればことは複雑です。義理の息子がいろいろ口を出してきて、居心地が悪くなり、いつのまにか家を乗っ取られる……ということだってありえます。仮に、今は娘が独身でも、そのまま一生ひとりかどうかはわかりません。いずれにしても家庭内のゴタゴタが増えるのは想像に難くないのです。一度独立した子どもとは、よほどのことがない限り別々に暮らしたほうが揉め事が少なく、家族みんなにとって幸せだと言えるでしょう。サポートは、同居せずとも受けられるはずです。

夫婦ならば、年老いてどちらかに介護が必要になるのは想定内。そのときになって慌てるのではなく、覚悟と準備をしておくことが大事です。どんな公的援助が受けられるのか行政に相談する、お金があるなら民間のヘルパーさんをお願いすることを検討するなど、理性的に対策を考えましょう。ここに感情は不要です。いずれひとりになることも想定しておくこと。そのときに、ひとりはさみしいから話し相手になる娘がそばにいたら安心、と思わなくてすむよう、ゆるく助け合える友人を作っておくなり、シニア向けマンションや老人ホームを下見しておくなりしておきましょう。