「毎日ちゃんと無視されに行かないと…」4年間も同級生に無視されていた娘!いじめを認めない学校!?子どもの笑顔を取り戻すために親ができること【著者に聞く】

AI要約

弟の一言から母親が娘のいじめを知り、ハルコが学校での演技を続ける中でいじめに苦しむ様子が描かれる。

さやけんさんの著書を元にした作品で、いじめの複雑さや見え方の違いに焦点が当てられる。

ナツミが娘の実態を知り、学校の対応に絶望し、いじめ問題の複雑さや対応策について考察される。

「毎日ちゃんと無視されに行かないと…」4年間も同級生に無視されていた娘!いじめを認めない学校!?子どもの笑顔を取り戻すために親ができること【著者に聞く】

「お姉ちゃん、学校でいじめられてるんだってーー。」

同じ小学校に通う弟のひと言で、娘・ハルコがいじめられていることを知った母親。ハルコはいつも学校に楽しそうに通っていたし、放課後も友達と遊びに公園に出かけていた。それがすべて、ハルコの演技だと知った母親は...?家族に見せる笑顔の裏で、「今日も無視されるために学校に行かなきゃ」と、学校に通おうとするハルコ。その日々はなんと4年間にも及んだ。今回は、さやけん(@SaYaKen38)の著書「家族全員でいじめと戦うということ。」を紹介するとともに本作について話を聞く。

■仲良し同士のこじれた関係性から、少しずつ始まった「無視」がきっかけ

母親のナツミがハルコのいじめ問題に気づいたのは、「お姉ちゃん学校でいじめられてるんだって」という弟・フユタのひと言だった。しかし、ハルコは元気に学校から帰宅。友達と遊ぶ約束をしているからと、公園に向かった。「そんなはずは…」と思い、ナツミは息子を連れて公園に行くと、そこにハルコの姿はなく...。帰宅したハルコに「ずっと公園で遊んでたの?楽しかった?」と聞くと、「うん。みんなと鬼ごっこした」と彼女は笑っていた。どうして噓をつくんだろう。ナツミは、ハルコの笑顔に疑念を持ち始めた。

本作は、さやけんさんの友人の体験を元にフィクションを交えて描かれた。「いじめは『この人が加害者でこの人が被害者』という簡単なものではなく、本当に複雑で難しい問題なのだと強く感じています。誰しも一度は見たこと、聞いたこと、体験したことがあるような、ささいなことが発端だったりもします。ナツミさんと同じように、私自身も我が子を思うあまり判断を間違えることもあるでしょうし、怒りや悲しみの感情に身を任せ、物事の本質を見失い、結局は大切な我が子を追い込んでいくことさえあり得ます。疑似体験として、小さな子どもたちのそんな実態を誰かに知ってほしい、自分自身も描きながら学ぶことができれば、と思い描き始めました」と、さやけんさんは制作の経緯を話す。

ナツミは何か手がかりはないか、娘の部屋を探した。そこで見つけたのは、自然教室の写真。「楽しかった!」そう言って、いろいろな話を聞かせてくれた。それなのに写っている写真は全部1人。笑ってる写真は1枚もなかった。

そして、運動会では姉と弟の共通のクラスメイトの母親から「ハルコちゃん1年の終わりからずっと無視され続けてたって...」と聞かされ、ナツミはショックを受ける。4年間も娘が友達から虐げられていたことに気づかなかった。自分は娘の一体何を見ていたのだとーー。

本作にはハルコと同様「私もいじめられていて、親にも言えなかった」「どうするのが正解なんだろう」などの声が届いた。「このお話を描き始めてから多くの体験談をいただくことが増えました。先生や親が助けてくれたという方がいる一方で、誰も助けてくれず、今も心に傷を抱えている方も多く、本当に胸が締め付けられます」と、さやけんさん。

ナツミはいじめの実態を知り、学校に掛け合うものの担任は「勘違い」を主張。向き合ってくれない学校、いじめが親にバレてから、ついにハルコは学校に行けなくなる。本作は学校視点、加害者視点、被害者視点でそれぞれの見え方が変わってくるのが大きな特徴だ。「『真実』は、語り手の立場と視点によって大きく変わります。その人が嫌いだからとか、話し方が気に入らないからとか、派手だから、目立つから、暗いから、よそ者だからと、その印象に惑わされることも多いと思います。それらの言葉がすべて真実とは限りませんし、その裏側ではもっと複雑な事柄が含まれているはずです」。ほんのささいな行き違いも絡み合ってしまうと、なかなかほどけなくなる。まるで糸のようだ。

「いじめの加害者が悪いのは当然ですが、誰が加害者になるかはわかりません」と、いじめ問題に向き合ったさやけんさんは話す。「心に傷を負った被害者にとっては、傍観者も、助けてくれなかった先生や大人も、加害者と何ら変わりはありません。大切に育て、人を敬う気持ちを教え続けていた我が子が結果的に加担していた、ということも決して少なくないと思います。勇気を出して声を上げれば自分も被害に遭うかも、というのは、子どもたちにとっては恐怖でしかありません」

声を上げることが、彼らの狭いコミュニティにどれほどの影響を及ぼすか。明日は自分が、そんな恐怖が目の前にあるのだ。「どうすれば被害にあった子が相談しやすくなるのか、先生たちはどう動くべきなのか、傍観者になってしまった子はどうすればいいのか。我が子がいじめに加担していた場合、親はどうするべきなのか。本作が考えるきっかけになればと感じています」(さやけん)

取材協力:さやけん(@SaYaKen38)