大阪万博は防災対策も不安だらけ…南海トラフ地震でも「夢洲は液状化しない」大甘想定だった

AI要約

南海トラフ地震の対策に関する懸念が高まっており、大阪府を含む29都府県が防災対策の推進地域に指定されている。

大阪万博の防災計画に対する不安が広がり、万博への子どもの無料招待事業をめぐる要望書や署名は市民から提出されている。

万博会場の液状化や避難計画の想定が不十分であり、実効性のある対策の策定が求められている。

大阪万博は防災対策も不安だらけ…南海トラフ地震でも「夢洲は液状化しない」大甘想定だった

「いのち輝く」どころか、身の安全への不安が募るばかりだ。「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」の発出に伴い、国は内陸地域を含む29都府県を防災対策の推進地域に指定。来年4月に大阪・関西万博開催を控える大阪府も対象地域に入っているが、万博の防災対策がズサン極まりない。

 万博への子どもの無料招待事業をめぐり、大阪市の教職員退職者で構成する団体が9日、生徒の安全が確保できない場合は見学中止を指示するよう求める要望書を市に提出。別の市民団体も同日、事業中止を求める署名9478筆を府と府教委に渡した。

 そもそも、メタンガスの爆発事故が起きた会場へ子どもを送り出すことに不安を感じない方が無理な話。被災想定が大甘では、なおさらだ。

■計画は9月に先送り

 万博協会が作成した「防災基本計画」(初版)は、南海トラフ地震が発生した場合の建物被害について〈窓ガラス等の飛散〉などを想定。一方、〈パビリオン等は新築で耐震設計されているため、倒壊・崩壊する可能性は低い〉と楽観的だ。

 液状化の予測に至っては、〈会場の大部分は液状化が起こらない想定となっている〉と主張してはばからない。大阪万博問題を取材するジャーナリストの木下功氏は「正確性を欠いている」と指摘して、こう続ける。

「万博会場の跡地に開業予定のIR(統合型リゾート)のための地盤改良工事で、大阪市は液状化対策などに最大788億円の公金をつぎ込むことを決めています。そもそも市は夢洲は液状化しないとの想定でしたが、IR業者からリスクをツッコまれて対策せざるを得なくなったのです。実態を反映していない予測を出すこと自体、おかしな話なのに、避難想定もおかしい。基本計画では、発災時に夢洲から隣接する舞洲や咲洲への避難が想定されています。ところが、夢洲に比べて〈咲洲及び舞洲に関しては、液状化が起こる可能性が高い〉と予測している。つまり、液状化の可能性が低い場所から高い場所へ避難することになっているのです」

 協会は「実施計画」に基づき、具体的な避難計画を策定中。「今年夏ごろ」に終わるはずが、9月に先送りとの見通しも浮上している。実効性のある対策を出せるのか見ものだ。

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 大阪では8月に入り連日、最高気温が35度を超える猛暑日。かねてから万博は熱中症の危険性が指摘されているが、過酷な暑さの中にいるのは現場の作業員も同じだ。

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