年末調整の廃止後に「増税になる人」と「減税になる人」を分ける3つの要因

AI要約

自由民主党の総裁選挙が2024年9月12日に告示され、同年9月27日に議員の投開票が実施されます。総裁選挙で選出された候補は次の総理大臣候補として注目を集めています。

河野太郎氏が年末調整の廃止案を提案し、会社員も自営業者やフリーランスと同様に確定申告を行うことが話題です。この政策の実現により、税金の負担が変化する可能性があります。

確定申告の重要性や手続き、税金の過不足を精算する年末調整の仕組みについて詳しく説明されています。

年末調整の廃止後に「増税になる人」と「減税になる人」を分ける3つの要因

自由民主党の総裁選挙が2024年9月12日に告示され、同年9月27日に議員の投開票が実施されます

この総裁選挙で選出されると、通常であれば次の総理大臣になるため、かなり注目度が高いのです。

また立候補している議員からは、各自が総理大臣になった時に実現したい政策の案が発表されています。

その中で最近に話題なのは、年末調整を廃止して、会社員も自営業者やフリーランスなどと同じように確定申告を実施するという、河野太郎氏が発表した案です。

河野太郎氏が総裁選挙で選出された場合や、引き続きデジタル大臣を務める場合には、廃止に向けた議論が進む可能性があります。

また将来的に年末調整が廃止になった場合、増税になる人だけでなく、減税になる人もいると思いますが、それを分ける要因は次のような3つになります。

年末調整は所得税の過不足を精算する手続き

会社員(正社員、パート、アルバイトなど)に課税される所得税は勤務先が計算しますが、その手順を簡潔に説明すると次のようになります。

(A)年収(1月~12月の給与の合計額)-給与所得控除(会社員にとっての必要経費)=給与所得

(B)給与所得-所得控除(扶養控除、配偶者控除、社会保険料控除、医療費控除など)の合計額=課税所得

(C)課税所得×5%~45%の税率(課税所得の金額で変動)-税額控除(住宅ローン控除など)の合計額=所得税

このように所得税を計算する際は年収のデータが必要になるため、12月になって年収が確定するまでは、正確な金額の所得税を計算できません。

ただ年収が確定した後に、源泉徴収(勤務先が従業員の代わりに納税するため、給与を支払う前に実施する所得税の天引き)すると、例えば12月に負担が偏るのです。

そのため従業員の収入が一定額以上ある場合、勤務先は扶養親族の人数などを元にして概算の所得税を計算し、それを1月以降の給与から源泉徴収していきます。

また12月になって年収が確定すると勤務先は、正確な金額の所得税を計算するのです。

この正確な金額の所得税と、

1月以降の給与から源泉徴収した概算の所得税の合計額を照合し、

前者の方が多かったら勤務先は追加で所得税を徴収します。

それに対して後者の方が多かったら勤務先は、源泉徴収した所得税の一部を還付します。

年の終わりに勤務先が定期的に実施する、このような所得税の過不足を精算する手続きが、最近に話題になっている年末調整なのです。

会社員でも確定申告を実施するケース

会社員の所得税の過不足は原則として年末調整で精算されるため、確定申告で過不足を精算する必要はありません。

ただ年収が2,000万円を超える会社員などは、年末調整の対象にならないため、確定申告を実施する必要があるのです。

所得税の負担を軽くするための制度として、(B)に記載した全部で15種類の所得控除があります。

この所得控除は扶養控除、配偶者控除、社会保険料控除のように、年末調整で受けられるものがあります。

一方で例えば医療費控除は年末調整では受けられないので、所得税の過不足が年末調整で精算されている場合でも、確定申告を実施するのです。

また(C)に記載した住宅ローン控除は、2年目以降は年末調整で受けられますが、1年目だけは確定申告で受けるのです。

要因1:確定申告

例えばアメリカでも給与から所得税が源泉徴収されますが、過不足を精算する年末調整は実施されないようです。

そのため会社員であっても確定申告を実施し、この時に所得税の過不足を精算するのです。

河野太郎氏が発表した案の詳細はわからないのですが、おそらくアメリカと同様に年末調整をなくしても、1月以降の給与からの所得税の源泉徴収は継続すると思います。

その理由として源泉徴収という効率良く税金を徴収できる仕組みを、政府は手放したくないと推測するからです。

また現状の年末調整は所得税が追加で徴収されるよりも、源泉徴収された所得税の一部が還付される場合の方が多いのです。

こういった点から考えると、年末調整の廃止後に確定申告を実施しない人は、源泉徴収された所得税が還付されないため、廃止前よりも増税になるのです。

要因2:マイナンバーカード

会社員も確定申告のために税務署を訪れるようになると、職員は仕事が増えて対応できなくなる可能性があります。

またマイナンバーカードの保有枚数(交付枚数から死亡などによる廃止分を差し引いて算出)は、2024年8月末時点で約9,347万枚、人口に対する割合は約74.8%です。

こういった点から推測すると政府は、マイナンバーカードを使ってパソコンやスマホからe-Taxで確定申告することを、国民に推奨すると思います。

e-Taxを利用すると税務署に足を運ぶ必要がなくなるので、平日に仕事を休めない会社員でも確定申告を実施しやすいのです。

またスマホのカメラで「給与所得の源泉徴収票」を撮影すると、その中の年収などのデータが自動入力されるため、慣れると手書きよりも簡単になります。

このようにe-Taxを利用した確定申告は、税務署だけでなく国民にもメリットがありますが、マイナンバーカードを持っていないと恩恵を受けにくいのです。

そのため河野太郎氏が年末調整の廃止案を発表した隠れた目的は、マイナンバーカードの普及や利用促進なのかもしれません。

いずれにしろマイナンバーカードは、源泉徴収された所得税の還付を受けやすくするため、これを使いこなせる人は還付を受けないで増税になるのを回避できると思います。

要因3:税金の知識

自営業者やフリーランスなどは会社員よりも、税金の知識を身に付けている場合が多いのです。

この主な理由は確定申告だと推測するので、会社員も確定申告の回数が増えるほど、税金の知識が身に付くと思います。

また税金の知識が身に付くと、自分の状況に合った節税法を見つけやすくなるのです。

例えば20歳以上は学生でも国民年金の保険料を納付しますが、申請して学生納付特例を受けると、学生時代の間は納付する必要はありません。

この制度を利用した人が例えば賞与が多かった年に、学生時代の国民年金の保険料を追納して(B)の社会保険料控除を受けると、所得税が増えるのを抑えられるのです。

また(A)の給与所得控除は年収で決まりますが、例えば資格を取得するために費用がかかった時や、業務に関する衣服を購入した時に、更に控除できる場合があります。

その理由としては会社員の必要経費が多くなった時に、給与所得控除に上乗せして年収から控除できる、「給与所得者の特定支出控除」という制度があるからです。

これを受けるには確定申告が必須になるため、年末調整の廃止後は利用者が増えるかもしれません。

ただ制度の存在を知らなければ受けようとは思わず、また受けるための準備もしないため、減税のために税金の知識は大切になるのです。