「マスク論争」に終止符? 新たなエビデンスが英国医師会誌で報告される

AI要約

新型コロナウイルスのパンデミック時において、感染拡大の抑止を目的にマスクの着用が推奨されました。しかし、コクランレビューによると、マスクの感染予防効果は明確ではないとされています。

ノルウェーで行われた研究では、18歳以上の4647人を対象にマスクの着用の効果が検証されました。結果としてマスクを着用する群では症状報告が有意に低下し、感染症の拡大防止にマスクが有効であることが示唆されました。

論文著者らは、マスクの着用は負担が少なく低コストであり、感染症の拡大を防ぐ重要な対策であると結論しています。

「マスク論争」に終止符? 新たなエビデンスが英国医師会誌で報告される

【役に立つオモシロ医学論文】

 新型コロナウイルスのパンデミック時において、感染拡大の抑止を目的にマスクの着用が推奨されました。一方、妥当性の高い医療情報として定評のあるコクランレビューに、2023年1月30日付で報告された論文では、感染予防に対するマスクの有効性は示されませんでした。

 ただし、コクランレビューで分析された研究データの質は低く、マスクの有効性については議論の余地も多く残されていました。そのような中、感染症に対するマスクの効果を検証した研究論文が、英国医師会誌の電子版に24年7月24日付で掲載されました。

 ノルウェーで実施されたこの研究では、18歳以上の4647人が対象となりました。被験者は、公共の場(ショッピングセンター、路上、交通機関など)でマスクを着用する群と、マスクを着用しない群にランダムに振り分けられ、呼吸器感染の症状(鼻水や咳、くしゃみ、倦怠感など)を報告した人の割合が比較されています。

 なお、この研究は新型コロナウイルス及びインフルエンザウイルスが流行していた23年2月10日から4月27日までの間に行われており、マスクを着用する群の被験者には、サージカルマスクが無償で提供されました。

 14日間にわたる追跡調査の結果、症状の報告は、マスクを着用する群で8.9%、マスクを着用しない群で12.2%と、マスクを着用する群で29%、統計学的にも有意に低下しました。ただし、マスクを着用する群では、他の人から不快な言葉を浴びせられた人や、「マスクの着用はバカげている」と感じた人が多いことも分かりました。

 論文著者らは「マスクの着用は負担が少なく低コストであり、感染症の拡大を防ぐうえで、積極的に検討できる公衆衛生上の対策である」と結論しています。

(青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)