栄養ドリンクでよく聞く「タウリン」の効果って何? 健康寿命に好影響と近年注目 医師が解説

AI要約

タウリンは、滋養強壮や疲労回復などの効果がある美容・健康成分であり、血圧や肝機能、免疫力の調整にも効果的であることが分かっています。

タウリンは体内の細胞の機能を維持し、老化を遅らせる効果があり、加齢に伴う筋力低下や免疫力の維持にも役立つことが最近の研究からわかっています。

タウリンは水に溶けやすいアミノ酸であり、鍋物やスープ、シーフードカレーなどを通じて摂取することがおすすめされています。

栄養ドリンクでよく聞く「タウリン」の効果って何? 健康寿命に好影響と近年注目 医師が解説

「その成分、本当に効果ある?」――最近よく聞く、話題の美容・健康成分は本当に効果があるのかを医師が解説します。今回は、栄養ドリンクなどで誰もが目にしたことがあると思われる「タウリン」について。滋養強壮や筋肉疲労の回復などが有名ですが、そのほかにも血圧や肝機能の調整や免疫の維持など、いまだに新たな効果が発見され続けている栄養素でもあります。血液内科医の久住英二先生に、詳しくお話を伺いました。

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 タウリンはイカやタコ、貝類、甲殻類及び魚類(心臓・脾臓・血合い肉)に多く含まれる栄養素ですが、人間を含めた哺乳類も持っています。世界で初めてタウリンが発見されたのは1827年、ドイツにおいてで、科学者が牛の胆汁中から発見したといわれます。その後、1846年に、人体にもタウリンが存在することがわかりました。

 タウリンは、人体の膵臓において微量に作られ、実は人体の多くの組織で最も豊富に存在するアミノ酸です。哺乳類ではとくに心臓、脳、骨格筋、肝臓、網膜に多く存在することがわかっています。浸透圧調節に深く関与していて、細胞の大きさを調節したり、筋肉を維持・回復したり、ストレス応答、免疫の働きを調節するなど、多彩な機能を持ちます。

 日本では第二次世界大戦前から栄養剤として研究が始まり、1949年に日本でタウリンを含む栄養剤が発売されました。当初は、タコの煮汁を原料にして栄養ドリンクを作っていたそうです。

 疲労回復や滋養強壮の効果が有名ですが、長い歴史のなかで、次々と新たな効果が発見され続けています。

 体内の毒素の解毒や代謝を管理する臓器である肝臓の細胞を保護し、肝機能を向上させる効果は古くから有名です。世界でもタウリン摂取量が多い地域では、心血管疾患の発生率が低いことが示唆されています。

 血圧を調節して血管の柔軟性を保つ効果もあるので、動脈硬化や高血圧のリスクを低減、心筋梗塞や脳卒中の予防につながることも期待できます。海に囲まれ、海産物を多く食べる日本人が世界的に見ても長寿である理由のひとつは、タウリンだと推測する研究者もいます。

 2023年6月、アメリカでタウリンが細胞のアンチエイジングに寄与することが発見され、大きな話題となりました。タウリンは、体内の“サビ”(フリーラジカル、プラスとマイナスの電子が対になっていない分子。細胞やDNAにダメージを与える)を中和して細胞の酸化ダメージを防ぐことで、老化の進行を遅らせる可能性があることがわかったのです。

 タウリンの補給は、認知機能の改善や身体機能の維持に役立つことが示されています。この7月には、高齢者を対象とした研究で、加齢とともに衰える筋力の低下をゆるやかにすることが、日本におけるヒトの検証実験で明らかにされました。筋肉のパフォーマンスと回復力を向上させることは有名でしたが、筋肉の収縮と成長を助け、加齢に伴う筋力低下(サルコペニア)を防ぐ効果も期待され始めました。

 また、白血球の機能をサポートし、体内の感染症や感染による炎症反応を抑えることで免疫力の維持にも役立つと見込まれています。最近は新型コロナウイルスやインフルエンザ、手足口病なども大流行しているため、積極的に摂っていきたい栄養素のひとつです。

 タウリンは水に溶けやすいアミノ酸なので、汁ごと摂れる鍋物やスープなどに調理するといいでしょう。魚介類と塩分を加えた汁物を食事に取り入れるのは、夏の熱中症対策にも感染症対策にもおすすめです。

 シーフードカレーにするのも、タウリンを余さず摂れますね。

◇久住英二(くすみ・えいじ)

内科医・血液専門医。1999年、新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。