全国の海岸線を知る男が教える「夏のうまい地魚はコレだ」(後編)

AI要約

アオザメは、新鮮で身が美しいピンク色のサメで、爽やかな食感が楽しめる。静岡の網代定置網で捕獲された100キロを超えるアオザメは、ステーキにすると特においしい。

イシダイは夏の季節に群れで定置網によく入り、引き締まった白身と甘い腹身の脂が特徴。皮を利用した料理もおすすめ。

地魚のアオザメとイシダイ、それぞれの特徴を堪能できる海岸線をめぐる旅が楽しい。

全国の海岸線を知る男が教える「夏のうまい地魚はコレだ」(後編)

 旅行の大きな楽しみのひとつは、おいしいものを食べることだろう。島国ニッポンなら、やっぱり魚。それも、旅先の周辺で親しまれ、地元の食卓に上がる地魚だ。全国の海岸線をめぐり、東京海洋大で魚食文化論の講義も担当した西潟正人氏がすすめる全国のウマい地魚の後編をお届けする。

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■身はピンク色。特有の食感と爽やかさがいい

■アオザメ

 アオザメは、世界中の温帯から熱帯域に生息する。全長4メートルを超え、人を襲うこともある危険なサメだ。

 相模湾と駿河湾はサメ類が多く、深海ザメを専門にする漁師もいる。興味があれば、サメに出合う漁港巡りも楽しいかもしれない。

 アオザメは、日本で捕獲されると、練り製品などの加工業者へ運ばれるが、アメリカではステーキにして人気の高級魚と聞く。

 静岡の網代定置網で、100キロを超すアオザメが捕れた。東京・品川の直営店に即日運ばれて解体、夕方には客に提供された。一般にサメ類は新鮮でもきついアンモニア臭に閉口するが、ネズミザメ科のアオザメにはそれがない。身は美しいピンク色。サメ類特有のざくざくした食感だが、爽やかさがいい。

 アオザメやネズミザメは、産地ならスーパーや魚屋に並ぶことがある。心臓は星と呼ばれ、けっこうな値段だ。ステーキを食べると、これがサメかと思うほどおいしいのだ。

■イシダイ

 夏の季節、イシダイの若魚は群れで定置網によく入る。老成するとクチバシが黒くなることからクチグロ、近縁種のイシガキダイをクチジロと、釣り人は尊称を込めて呼ぶ。

 サザエなど硬い殻を砕いて食べるから、強靱な顎を持つ。そんな性格からか身は硬く締まり、皮も硬い。力強いから、釣り人にとっては羨望の的になる。

 伊豆諸島の荒磯を本場とするから、イシダイ料理屋もその辺りに集中するのだろう。定置網で捕れると、市場価格は釣り人気ほど高くない。夏の魚好きには、狙い目の魚だ。

 引き締まった白身は、ワサビ醤油と相性がよい。腹身の脂は甘いながらも清涼感が漂う。

 刺し身に引いた皮を、忘れてはいけない。細かく硬いウロコを丁寧に取って洗い、湯通ししたら冷水に浸す。水気を切って刻んだら、酢味噌に和える。イシダイの皮ヌタ、夕涼みで一杯やりたくなるような逸品である。