住宅ローン、急いで300万円を「繰り上げ返済」するのは得なのか?FPが明かす「理論的な正解」

AI要約

住宅ローンを利用する人の中には、「繰り上げ返済」を考える人もいるが、短期的な損得だけで判断すると後悔する可能性がある。

ファイナンシャルプランナーの磯山裕樹氏が、住宅ローン借入金の繰り上げ返済について事例を交えて解説。理論的には資産運用でより多くのリターンを得る方が合理的。

将来は不確実なので確実ではないが、資産運用を勉強し、実践できる場合は繰り上げ返済よりも賢明な選択となる。

住宅ローン、急いで300万円を「繰り上げ返済」するのは得なのか?FPが明かす「理論的な正解」

住宅ローンを利用する人の中には、資金に余裕ができたら「繰り上げ返済」をして、借入金を少しでも減らしたいと考える人もいるだろう。しかし短期的な「損得」で「繰り上げ返済」を選ぶと、後々後悔する可能性もある。ファイナンシャルプランナーの磯山裕樹氏が事例を交えて解説する。

「300万円の繰り上げ返済にあてられるお金があります。繰り上げ返済した方がよいでしょうか? 本やYouTubeを見ると繰り上げ返済してはダメとよくありますが、本当でしょうか?」

今回は、そんなご相談に来られたAさんの事例を見てみましょう。

Aさんは、現在35歳で、次のような内容で住宅ローンを借りています。

・期間:30歳のときに35年のローンをくみ、現在35歳で残り30年

・金利:変動金利0.5%

・残高:3000万円

・返済方式:元利均等

私:「なぜ繰り上げ返済を検討されているのですか?」

Aさん:「支払う利息が減るからです」

私:「繰り上げ返済の一番のメリットは利息が確実に減ることですね」

では、どのくらい利息が減るメリットがあるのか、考えてみましょう。

このまま変動金利が0.5%で続いた場合、これから30年で支払う利息の合計は約230万円になります。300万円を繰り上げ返済すると、残高3000万円ではなく、2700万円に対しての利息になるので、繰り上げ返済した300万円の利息が消え、総返済額を減らすことができます。利息は、約230万円から約185万円になり、約45万円の利息を削減できます(期間短縮型の場合)。

Aさん:「今、300万円を繰り上げ返済すれば、45万円の利息が削減できるなら、絶対やった方がいいですよね?」

私:「繰り上げ返済をするかどうかは、この利息削減の損得だけでは判断できません」

Aさん:「そのほかの判断ポイントがあるということですか?」

まず、理論的な正解を見てきましょう。

今後0.5%の金利が住宅ローン完済まで続く場合、300万円を繰り上げ返済した場合のメリットは、30年で約45万円の利息の削減でしたね。

では、300万円を繰り上げ返済せず、資産運用した場合どうなるでしょうか? 30年後の利益は、年利回り1%で104万円、4%で673万円、7%で1984万円になります。

300万円を繰り上げ返済すると、確実に45万円の利息を削減できますが、年利回り7%で運用できた場合は1984万円の利益になり、その差は1939万円になります。

理論的には、低金利で住宅ローンを借りて、余った現金を使って株式などでより多くのリターンを出すことが正解です。低い金利でお金を借りたままにしておき、繰り上げ返済をせず、そのお金を資産運用した方が合理的です。

Aさん:「300万円を繰り上げ返済にあてるのではなく、そのお金を資産運用すると、30年で2000万円の差がでる可能性があるということなんですね。ただ、これって確実ではないですよね?」

私:「将来は分からないので、確実ではありません。もちろん、きちんと資産運用を勉強して、実践できる人の話になります」