能登復興を願う大型ねぶたが出陣へ 下絵原案を描いたのは中学生

AI要約

青森ねぶた祭が開催され、被災地復興を願う大型ねぶたが登場する。

市P連は石川県志賀町の小中学生を招待し、祭りに参加させる。

子供たちが下絵の原案を描いたねぶた制作は、被災地への思いも込められている。

能登復興を願う大型ねぶたが出陣へ 下絵原案を描いたのは中学生

 国の重要無形民俗文化財で、日本を代表する火祭りの一つに数えられる青森ねぶた祭が今年も8月2日から7日まで青森市で開かれる。元日に起きた能登半島地震の被災地復興を願い、中学生が下絵の原案を描いた青森市PTA連合会(市P連)の大型ねぶた「龍神(りゅうじん)と大鯰(おおなまず)」を先頭に、期間中22台が出陣する。

 市P連は地震で大きな被害を受けた石川県志賀町の小中学生と保護者計40人を祭りに招待する。4日に祭りを観覧し、5日には三内丸山遺跡などを観光した後、山車の周りで舞い踊る跳人(はねと)として祭りに参加してもらう予定だ。

 「主役は子供たち」と棟方丈博会長(46)が語る市P連ねぶたは、毎年笛や太鼓などの囃子(はやし)方を、市内の子供たちが中心となって担う。約40年の歴史があり、「ねぶた好きの登竜門」として知られ、多くの市民が初めて参加する大型ねぶたとしてこの団体を選んできた。新型コロナの影響に伴う中断を経て4年ぶりに出陣した2023年は4日間の運行で計1200人を超える子供たちが集まった。

 昨夏の祭りが終わって間もない9月ごろ、棟方会長はある決断をした。「文化の継承のため、制作段階から子供たちを参加させよう」。通常、祭りに出陣する大型ねぶたは、制作者であるねぶた師が下絵を描き、それを基にねぶた師を中心としたチームが針金や和紙を駆使して大型の山車を制作する。だが、棟方会長は下絵の原案を市内の子供たちから募集しようと考えた。

 ねぶたの下絵のための原画・題材コンテストが行われているさなか、今年1月に能登半島地震が発生した。子供たちから寄せられた25作品の中には、被災地の復興をテーマにしたものがいくつもあった。その中から市立甲田中2年の高橋悠真さん(14)の作品が採用された。

 母のあゆ美さん(38)によると、高橋さんは元日に自宅で家族と過ごしている時に地震を知った。「能登の人たちに『応援しているからね』という気持ちが伝われば」という思いを込め、地震を起こすという大ナマズを龍神が退治する姿を描いたという。ねぶたは「いかに高橋さんの思ったとおりに作るか」を模索しながら、ねぶた師の内山龍星さん(62)が制作。高橋さんも正面にあたる波の部分の色つけ作業を体験した。

 市P連は当初、被災地でのねぶた運行を検討したが、春になっても道路状況が良くならないことなどから断念。その代わりに、被災した志賀町から小中学生らを招待することにした。費用は市民からの寄付などでまかなう。東日本大震災や熊本地震の際に、被災者をその年の祭りに招いた他団体からも助言を受けながら、準備を進めてきた。

 棟方会長は「ねぶたはただ単に楽しければいいというだけではなく、元々、困っている人たちを笑顔にさせる役割があるのではないか」と語る。被災地への大勢の思いを乗せたねぶたが、小屋の中で出陣の時を待っている。【江沢雄志】