女子体操・宮田笙子選手の飲酒・喫煙問題…パリ五輪辞退がスッキリしない理由【「表と裏」の法律知識】

AI要約

宮田選手の飲酒と喫煙問題に関する法的側面について解説。

20歳未満の飲酒や喫煙は違法だが犯罪には該当せず、親権者や販売店にも責任が及ぶ可能性がある。

日本代表チームの行動規範には違法行為の禁止だけでなく、20歳以上の飲酒や喫煙も規定されており、今回の問題を踏まえた改正が重要である。

女子体操・宮田笙子選手の飲酒・喫煙問題…パリ五輪辞退がスッキリしない理由【「表と裏」の法律知識】

【「表と裏」の法律知識】#244

 体操女子の日本代表で主将である宮田笙子選手(19)の飲酒と喫煙問題が関心を集めています。出場辞退に対し、宮田選手の在学する順天堂大学が、20歳未満の選手による法律違反を擁護するような声明を出したことも注目の的です。

 高校を卒業してから20歳になる前に大学の友人やサークルの仲間、アルバイト先の同僚らと飲みに行っている若者は多いように思います。「たばこやお酒は20歳になってから」といったポスターを見かけますが、今回の宮田選手による飲酒や喫煙は犯罪に当たるのでしょうか。

 犯罪とは、法に違反し刑罰を科される行為をいいます。20歳未満の者が飲酒や喫煙をすることは、法律に違反します。しかし、刑罰を科されることはありません。ですから犯罪には当たりません。宮田選手の飲酒や喫煙は違法な行為ですが、犯罪ではないということになります。不倫や売買春と同じです。

 これに対して、親権者らが20歳未満の若者の飲酒や喫煙を知ったにもかかわらず、これを制止しなかった場合、刑罰を科される可能性があります。また、知りながら酒類を販売・提供し、たばこを販売した店舗なども刑罰を受ける可能性があります。

 そこで、オリンピック出場を辞退させた日本体操協会の処分が厳しいのではないかといった記事やコメントを目にします。しかし、現在明らかになっている事情や報道では、あくまでも宮田選手自らオリンピックの出場を辞退したに過ぎず、同協会の処分によるものではありません。では、今回の宮田選手の行為が出場辞退をしなければならない行為に当たるか否かですが、「日本代表選手・役員の行動規範」は、違法行為を行わないという定めに加え、20歳以上であっても日本代表チームとしての活動の場所における飲酒や喫煙を禁止しています。

 もっとも、行動規範に違反した場合に具体的にどのような処分を受けることになるのかの定めが置かれていません。そこがポイントだと思います。今回の騒動を踏まえ、どの行動規範に違反すれば、どのような処分を受けることになるのか、違反の程度と処分の重さが均衡するような改正をしていくことが、二度と同じような問題を招かない手だてになるのではないでしょうか。

(髙橋裕樹/弁護士)