発熱とふるえの原因は納豆だった? 納豆菌による菌血症の症例報告 日本国内で5例目

AI要約

血液は免疫機能によって無菌状態を保つが、時に菌血症や敗血症を引き起こすことがある。

53歳の女性が切れ痔の治療中に納豆菌による極めてまれな菌血症を発症した症例が報告された。

納豆菌はごく小さな傷から侵入し、免疫の機能が正常な人でも菌血症を引き起こす可能性がある。

発熱とふるえの原因は納豆だった? 納豆菌による菌血症の症例報告 日本国内で5例目

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 血液は免疫機能の働きによって無菌状態に保たれています。しかし、無菌状態であるはずの血液から細菌が見つかることもあります。このような状態は菌血症と呼ばれ、発熱や悪寒(寒けとふるえ)などの症状を引き起こします。

 血液に侵入した細菌が、免疫機能を上回る増殖力を有している場合には、体中に炎症反応が発生することもあります。このような状態は敗血症と呼ばれ、病状が進行すると死に至ることも少なくありません。そのような中、極めて珍しい菌血症の症例が、感染症例に関する学術誌に2024年1月14日付で掲載されました。

 報告された症例は53歳の日本人女性です。菌血症を発症する3カ月ほど前から切れ痔(肛門付近の皮膚が裂けてしまった状態)の治療を行っていました。ところが、切れ痔の状態が悪化し、肛門付近の皮膚から出血が発生しています。

 出血から2日後に、発熱と悪寒の症状が現れ、医療機関で血液検査が行われました。初回の検査で菌血症と診断されたものの、原因細菌の詳しい調査は行われませんでした。ところが、再び行われた血液検査でも菌血症を認めたため、血液中から検出された細菌の特定が行われました。

 その結果、菌血症を引き起こしていた細菌は納豆菌であることが分かりました。症例の患者さんは納豆を毎日食べる習慣があり、切れ痔の出血した部位から、納豆菌が侵入したものと考えられます。

 納豆菌による菌血症は極めてまれなケースであり、日本でも本症例を含めて5例しか報告されていないようです。論文著者らは「納豆菌は、胃や腸に発生したごく小さな傷などを介して侵入することもあり、免疫の機能が正常な人でも菌血症を引き起こす可能性がある」と結論しています。

(青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)