「凡人こそいい医者なんだ」“普通のお医者さん”ってどんな人?~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.31~

AI要約

飯沼さんの手術で起こった合併症と手術の経過について解説されている。手術中に血管瘤の処置が難航し、人工血管でのバイパス手術が必要となったことが明かされる。

佐伯教授の不在時に起きた感染症の問題や処置の過程が描かれ、教授の帰国後に問題が露呈する展開が示される。

医療における手術時のリスクや合併症、感染予防などの重要性が強調され、複雑な血管手術の難しさが示唆される。

「凡人こそいい医者なんだ」“普通のお医者さん”ってどんな人?~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.31~

二宮和也主演で6年ぶりに日曜劇場に帰還する『ブラックペアン シーズン2』。シーズン1に引き続き、医学監修を務めるのは山岸俊介氏だ。前作で好評を博したのが、ドラマにまつわる様々な疑問に答える人気コーナー「片っ端から、教えてやるよ。」。シーズン2の放送を記念し、山岸氏の解説を改めてお伝えしていきたい。今回はシーズン1で放送された最終話の医学的解説についてお届けする。

※登場人物の表記やストーリーの概略、医療背景についてはシーズン1当時のものです。

■佐伯先生が行った飯沼さんの手術の手術記事

心臓から出た大動脈は上行大動脈、大動脈弓部となり、そこで右腕頭動脈、左総頚動脈、左鎖骨下動脈の三本の枝を出し、下行大動脈となりお腹へ行きます。

飯沼さんはこの左鎖骨下動脈の根本(起始部)の動脈瘤で、最初に急変したときは、この動脈瘤が破れかけていた状態です(切迫破裂)。

若かりし頃の佐伯先生はこの動脈瘤を切除し、大動脈弓部側は縫合止血できたのですが、左鎖骨下動脈の根本は深すぎてどうしても処置できず、ペアンで止血して、ペアンは胸の中にしまっておいたのです。確かにこの部分は若干の奇形があると非常に深い時があり、瘤が大きい時は、かなり遠くなってしまうので、止血困難となることがあります。

またその名前の通り、鎖骨下動脈は、鎖骨の下にあり、鎖骨が邪魔になり縫合止血できなくなることもあります。ほとんどの場合は処置できるのですが、飯沼さんの場合はいろんな状況が重なり、止血困難であったと思われます。左鎖骨下動脈を遮断すると、左手に行く血流が弱くなってしまうため、右の鎖骨下動脈と左の鎖骨下動脈に人工血管でバイパスをしないといけません(右の鎖骨下動脈の血流を人工血管を通して左の鎖骨下動脈に流します)。

佐伯教授がアフリカに行って日本にいないときに、飯沼さんの処置を渡海一郎先生が行ったのですが、この時はバイパスに使用した人工血管周囲が感染していて、画像の(3)の傷を再度開け、感染した組織を採っていたら、たまたま胸腔が開いてペアンが見えてしまったという流れです。で、その時のレントゲンを黒崎先生に見られてしまった。その後渡海一郎先生は東城大学を追われることとなります。