「孤独死」背景に「セルフネグレクト」 引きこもり、外部と関係断ち実態顕在化しにくく

AI要約

若者の孤独死が深刻化しており、主な要因はセルフネグレクトが挙げられている。

セルフネグレクトによる治療やケアの拒否や身体の清潔さの欠如などが孤立死に繋がるリスクを高めている。

孤立死の増加による社会経済的な影響も懸念されており、政府も問題解決に取り組んでいる。

「孤独死」背景に「セルフネグレクト」 引きこもり、外部と関係断ち実態顕在化しにくく

若者の間でも誰にもみとられずに亡くなる「孤独死」の深刻化が危惧されている。高齢者も含め孤独死につながる要因は経済的困窮や認知症など多岐にわたるが、生活を維持する意欲や能力を失う「セルフネグレクト」も背景にあるという。外部との関わりも断ってしまうなどし実態が顕在化しにくいのも実情だ。

セルフネグレクトは必要な治療やケアの拒否のほか、身体を清潔にしない、ネズミや害虫、家屋内にゴミや排泄物の放置などが例として挙げられ認知症で判断能力や意思決定能力が低下しているケースもあるという。

ニッセイ基礎研究所の平成23年の調査によると分析した孤立死事例の約80%が「セルフネグレクト」で、孤立死に至る大きなリスクを負う状態と示された。

死後、発見が遅れて遺体が腐敗すれば、死因が判然としない事例が増えるほか、不動産価値の下落、身寄りがない場合は葬儀の対応といった自治体の負担増加など、社会経済的な影響も指摘されている。

政府は孤独・孤立を個人ではなく社会全体の問題と捉えて対策に乗り出しており、昨年は孤独死・孤立死の実態把握を目的とした作業部会を開いた。

これまで孤独死や孤立死は法的定義がなく、全国規模での年間の発生件数も明らかになっていなかったが、警察庁は今年5月、自宅で死亡した1人暮らしの人数を初めて公表した。

それによると、1~3月に全国警察が取り扱った6万466人の遺体のうち、自殺を含む自宅で死亡した1人暮らしの人は2万1716人。うち65歳以上の高齢者は1万7034人と約8割を占め、年間で約6万8千人と推計される。

ただ、孤独・孤立は高齢者に限った問題ではない。全国の16歳以上の2万人に聞いた政府の実態調査では、「孤独感がある」と答えた人(「たまに」などを合わせ)は39・3%に上り、最多は30代の46・1%だった。

20代は45・3%、40代も42・5%。一方、60代は36・2%、70代が30・5%で、現役世代の孤立感が強い傾向が出ており若者を含めた孤独・孤立への対策が求められる。(王美慧)

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