「前の住人が亡くなった部屋」でも知らされない場合がある…不動産鑑定士が明かす「事故物件」の意外な常識

AI要約

事故物件に住む際の注意点や価値の下落率について述べられています。

事故死や特殊清掃が必要な場合は告知義務がある一方、自然死や不慮の死については告知義務がないケースもあると説明されています。

高齢化に伴い孤独死が増加しており、これらの事件が起きた物件では価格や賃料に下落率が生じることが示唆されています。

物件を探すときに注意したいのが「事故物件」かどうかだ。条件によって、不動産を借りる側・買う側に告知される場合と、告知されない場合があるという。不動産鑑定士の泰道征憲さんと中瀬桃太郎さんの共著『悪魔の不動産鑑定』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部を紹介する――。

■自然死、不慮の死は「告知義務なし」

 皆さんは、事故物件に住みたいでしょうか? 事故物件なんか絶対に住みたくない人、価格・賃料が安ければ住める人、はたまた全く気にしない人もいるでしょう。

 このように、人の死に関する事案が起きた物件(事故物件)は、契約の判断に大きな影響を与える場合があるので、不動産業者は買主・借主に事故の事実を告知する義務があります(宅地建物取引業法第47条)。しかし、意外なことに告知しなくてもいいケースがあります。

 国土交通省のガイドラインによると、自然死、日常生活での不慮の死、隣接住戸または通常使用しない集合住宅の共用部分での死については、告知義務はないとしています。

■不動産業者は聞かれたら答える義務がある

 一方、告知義務がある具体例としては、自殺、他殺、火災等による事故死、特殊清掃や大規模リフォームが必要となった事案などです。

 なお、賃貸の場合、死が発覚してから概ね3年経てば告知義務がなくなります(売買の場合は期限の指定はなく告知必須)。ただし、事件性や周知性、社会性の観点から何年経っても告知しなければいけないケースもあるので、この期間はあくまで目安としてお考えください。

 また、不動産業者は買主・借主に人の死に関する事案について聞かれた場合、答える義務があるので、事故物件かどうか気になる人は業者に聞くようにしましょう。

■事故物件の価値は最大30%程度落ちる

 事故物件は、価格・賃料にどの程度影響を与えるのでしょうか。

 我々不動産鑑定士は、死亡時の状況、事件性、周知性、社会性等を考慮して下落率を査定するので一概に何パーセント下がるとは言えません。しかし、それだとつまらないので、不動産鑑定士の感覚として、一般的な価格・賃料の下落率をお見せしましょう。

 賃貸の場合、賃料の下落率は人気エリアでは5~10%程度、不人気エリアでは20%程度。売買の場合は、人気エリアでは10~20%程度、不人気エリアでは30%程度、価格が下落するとみられます。

 次に、①価格に大きく影響する場合、②標準的な場合、③価格への影響が僅少な場合に分けて説明します。

 ①事件性の高い他殺、火災事案

 最も下落率が高い事案です。とくに「連続殺人事件」「放火殺人事件」などとしてニュースで取り上げられた場合、一般的な方法では売却できず、訳あり不動産の専門業者などに買取依頼をすることが多いです。価格も相場の半値程度を覚悟しておいた方がよいでしょう。

 最近の事件だと「京都アニメーション放火殺人事件」「座間9人殺害事件」などが該当します。

■高齢化のいま、孤独死は決して珍しくない

 ②死後一定期間放置され、特殊清掃が必要になる

 自然死特殊清掃とは、孤独死や事故死、ゴミ屋敷などの特殊な事情がある部屋を掃除・原状回復する作業です。昨今では孤独死が一番多いでしょう。一人暮らしをしていたご年配の方が室内で亡くなってしまい、発見が遅くなってしまうケースです。

 たいていはドアや窓周辺にハエが飛んだり、外からでも分かる腐敗臭により、近隣の方から管理会社や警察に連絡が入ります。この場合、体液や臭いが床や壁に染み込んでしまい、通常の清掃では除去できないため、専門業者に特殊清掃を依頼します。なお、特殊清掃の費用は30万円~70万円程度です。

 また、アパート経営では建物の築年数が古くなったり家賃が安くなると、入居者の年齢が高齢化するため、特殊清掃が必要な自然死に遭遇する確率は必然と上がります。筆者のひとり、泰道の所有しているアパートでも2回ほど孤独死の経験があるので決して珍しいことではありません。

 この時の賃料の下落率としては、不人気エリアで20%程度、人気エリアだと5~10%程度の下落です。また、泰道が所有しているアパートで孤独死があった部屋は家賃を6万円から5.5万円に下げて入居してもらいました。