一問で合否を左右…中学受験本番、「補欠合格」という「不気味な言葉」の影響

AI要約
息子の中学受験での補欠合格についてむやみに勉強時間を費やすことなく、受験勉強を取り組んだ息子の様子第一志望の慶應への合格が果たせるのか不安な母親の気持ち
一問で合否を左右…中学受験本番、「補欠合格」という「不気味な言葉」の影響

「勉強嫌いの息子の中学受験は、完全に親のエゴでした。でも最後に『中学受験をしてよかった』という息子の言葉を聞いてホッとしています」

こう語るのは、森将人さん。慶應義塾大学を卒業した元大手証券ディーラーだ。

どのように「親のエゴ」と感じたのか。そして子どもとどのようにコミュニケーションを取り、「やってよかった」という言葉が出てきたのか。

森さんが率直につづる連載第8回は、6年生の1月。本番直前でナーバスになり、母子でトラブルがあったあと「本番」直前の様子を伝えている。

「中高6年間の大事な時期を、受験勉強ばかりに時間を取られずに過ごすには、大学付属校が一番」という方針で中学受験に挑むことを決めていた森さんは、息子と学校見学などもしたのち、第一志望を慶応、第二志望を立教新座とした。

2月1日~5日の、東京での中学受験の天王山は「いつどの学校を受験するか」もかなり重要となる。第二志望に合格することができれば、そのあとの受験を慶応だけに絞ることができるからだ。しかし不合格なら、さらに考えていく必要が出てくる。

その結果は……。

孝多は8時過ぎに起きると、明大中野の過去問を解いた。結果を考えると、勉強が手につかなくなってしまう。こんなときに集中できるのは、過去問しかない。第3志望だが今まで解いたことがなく、どれだけ実力がついているかを測るにはちょうど良かった。

過去問の結果は、合格者最低点を10点上回った。算数は良かったが、国語が受験者平均を下回っている。社会も理科も間違いは多かったが、合格ラインに達したことが自信につながればいいと割り切るしかない。

午後は、立教新座の合格発表だ。孝多が一人で見たいというので、ぼくはリビングの隣の席から孝多の表情を見る形になった。結果を見るまで笑っていた孝多の顔が、固まったまま動かない。落胆より困惑に近い表情だ。

補欠合格だった。

「微妙な差だったかもしれないね」

事情がわからない孝多に、妻が解説した。

「合格か不合格かっていう意味では、孝多は不合格なの。でも合格者がみんな入学するわけじゃないでしょ。ほかの学校に行く人もいるから、代わりに入れる人を確保しておかなければならなくて、その候補者の一人っていうこと」

「結果はいつわかるの?」

「この説明を見る限りでは、入試日程が終わるまでわからないね」