「子供にトラウマを残しそう…」悩ましい中学受験から“撤退”の決断 現役塾講師は期限を重視、撤退後の勉強への向き合い方

AI要約

中学受験を追う親の悩みや子供の負担、撤退のタイミングについて

適性がない場合の撤退時期や注意点、最終的な決断のタイミング

6年生の夏期講習前が最終の撤退タイミング、撤退後の充実した時間

「子供にトラウマを残しそう…」悩ましい中学受験から“撤退”の決断 現役塾講師は期限を重視、撤退後の勉強への向き合い方

 中学受験の長い道のりのなかでは、子供を見守る“伴走者”として競争から退く判断が必要な場合があるかもしれない。しかし、それまで何年にもわたり時間と労力、多額の費用を割いてきた中学受験を途中で諦めることは、子供本人としても、保護者としても受け入れ難いだろう。それでも受験からの「撤退」を決めるなら、いつ、どんな仕方ですればいいのか。保護者の赤裸々な悩みを、フリーライターの清水典之氏が識者にぶつけた。(全5回シリーズの第5回。第1回から読む)

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「中学受験」ブームの過熱で競争が激化している。習い事をすべてやめて受験に専念しても、みな同じように勉強しているのだから、現状維持がせいぜい。中学受験に対する適性がないと、波に乗りきれず、ずるずる成績が下がっていくことになりがちだ。

「撤退」の2文字が頭によぎるが、今までかけたお金と手間が無駄になってしまうようで、踏ん切りがつかない。想定していた子供の進路も不透明になり、今後の方針をどう切り換えればいいかもわからない。

 そんな親たちの相談に、Xのアカウント名「東京高校受験主義」で知られ、この5月に『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』を上梓した高校受験塾講師の東田高志氏に答えてもらった。今回は、中学受験からの「撤退」に関して寄せられたこんな相談だ。

《子供のつらそうな様子から、中学受験からの「撤退」が頭をよぎるが、どのタイミングで、何を基準に、どう決断すればいいのでしょうか。諦めて撤退したことが、子供にトラウマを残しそうで踏ん切りがつきません。かといって“全落ち”するのはもっと怖い》(43歳、専業主婦女性)

 そうした悩みを持つ保護者はたいへん多いが、決断するなら早いほうがいいと東田氏は言う。

「私のXのアカウントには、毎日のようにこうした相談が寄せられます。昔に比べて今の中学受験は過熱しすぎで、学習量も難易度も上がっているので、ついていけなくなる子も増えているという印象です。

 何を基準に撤退するかは難しいところですが、子供の様子をよく見ることが大事で、子供がポロポロ涙を流しながら、勉強がつらいと訴えてきたら、それはもう明らかに危険サインです。中学受験には、子供だけでなく親にも適性が必要で、成績が悪かったときに、子供を強い口調で叱ってしまうのを我慢できない人は、中学受験に向いていません。

 中学受験塾は4年生から入るのが一般的で、4年生の間はカリキュラムも緩くて、それほど負担にはなりませんが、5年生になると一気に厳しくなります。負荷が大きくなると、そこで初めて子や自分に適性があるかが見えてきます。子供も親としての自分も中学受験に向いてないとわかったら、それが撤退のタイミングと言えるでしょう」(東田氏、以下同)

 ただ、撤退を決断するのにも「期限」があるという。

「最後のタイミングは6年生の夏期講習前です。前回の記事(第4回)で、スポーツや習い事をしている子たちにとって6年生はゴールデンエイジだと述べましたが、まさに6年の夏休みは、ひたすらやりたいことに没頭して、非常に充実した時間を送れる時期です。夏期講習の前に撤退すれば、夏休みの時間を贅沢に使えるので、中断していたスポーツや習い事などの活動に復帰してもいいし、長期の旅行に出て子供にスペシャルな体験をさせてあげることもできます。

 6年の夏期講習は、塾での学習でも一番大変な時期なので、ここを乗り切れたのなら、今さら撤退の2文字はないでしょう。他の活動をすべて犠牲にして、3年間も頑張ってきて、入試直前になって撤退するとなったら、それこそ子供にとってはトラウマになりかねません。6年生の終わりまでに夏休みのような時間はもうありませんし、よほどのことがない限り、最後まで突っ走ったほうがいいと思います。結果がどうあれ、頑張った子供を褒めてあげましょう」