期待と戸惑い 過熱する〝富士見〟観光 探訪
夕暮れ時の富士吉田市の中心部を通る商店街では外国人観光客が増加しており、地元の対応に悩んでいる。
撮影マナーの問題や観光客の行動による混乱が起きており、市は警備員配置や英語の看板設置などの対策を行っている。
一部の地元住民は観光客の増加を歓迎し、地域活性化の機会と捉えているが、その影響はまだまだ続きそうだ。
太陽が西の空に傾き、街に明かりがともった。夕暮れの静かな商店街の奥で、富士山がほんのり赤く染まっていた。
山梨県富士吉田市の中心部を通る「本町通り」。学生服専門店や時計店などが並ぶ地域住民のための商店街といった趣だが、目立つのは外国人の多さだ。
日本人旅行者はあまり目を向けないこの商店街に外国人観光客が増えたのは約5年前。交流サイト(SNS)で「日本のレトロな街並みの向こうに富士山を望むことができる」と話題になったのがきっかけだ。コロナ禍で一時は沈静化したものの、現在は1日約3000人の外国人観光客が訪れているという。
思わぬ展開に、観光客の扱いに不慣れな地元は期待と戸惑いに揺れている。
手を焼いているのが撮影マナーだ。取材中も横断歩道をわたりながら記念撮影する人や、なかには車道の真ん中でカメラを構える外国人もいた。
市は、人が集まる撮影スポットに警備員を配置したほか、英語で交通ルールを守るよう促す看板を設置して対応している。
また、商店街で編み物教室を開く女性は「お教室の最中に観光客の方が入ってきてしまい落ち着かない」と困惑する。
その一方で、この事態を地域活性化に生かそうと、案内マップを作り、3月には観光案内所を開設した。
近くで飲食店を営む女性は「外国人のお客さんが増えてにぎやかになった。日本語で書かれたのぼりの前でよく写真を撮っている」と歓迎している。
富士山をめぐっては、屋根越しに山が広がるコンビニエンスストアを撮影しようと外国人が殺到し問題になったばかり。コロナ禍が明け、訪日外国人旅行者数は増加傾向が続く。意外な風景に魅力を見いだす外国人観光客に翻弄される日々はまだまだ続きそうだ。(写真報道局 三尾郁恵)