「世界一過酷」なヨットレースで3カ月海上独り。白石康次郎が孤独を感じない理由

AI要約

海の日にちなみ、唯一の日本人として世界一周ヨットレース「Vendée Globe」に挑む白石康次郎氏のインタビュー。

白石氏が孤独を感じない理由や食事、海上での生活について語る。

レース中の忙しさや海の上の生活、食事の工夫などが明かされる。

「世界一過酷」なヨットレースで3カ月海上独り。白石康次郎が孤独を感じない理由

今月第3月曜日の15日は「海の日」。「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」日として1995年に制定され、翌年より国民の祝日になった。

そんな海の日にちなみ、「世界一苛酷」と評される世界一周ヨットレース「Vendée Globe(ヴァンデ・グローブ)」と、唯一の日本人としてその大会に出場する白石 康次郎氏のインタビューを紹介する記事の後編。

前編「単独無寄港で約3カ月『世界一苛酷』ヨットレース出場の57歳白石康次郎の“叶わないわがまま”」では、パリからTGVで3時間半、フランスの大西洋岸に隣接する美しい海辺の街 ヴァンデ・グローブで、今年の11月に開催される、4年に一度行われるヨットレースが、なぜ「世界一過酷」と言われるのか。また、鎌倉で育ち、船乗りを目指して水産学校に通っていた高校生が、なにをきっかけにフランスのヨットレースを目指し、30年もの歳月をかけて出場権を獲得するに至ったか。

今年の「ヴァンデ・グローブ」への出場が3回目となる、DMG MORI Sailing Teamのスキッパー白石 康次郎氏のインタビューで紹介した。

後編では、総距離45000km、100日近い日数を、単独無寄港無支援でレースに臨む白石氏が、海の上で何を感じ、どう過ごしたのか、食事やごみの処理、孤独や体の不調を感じた時はどう対処したのか。

白石氏のインタビューの続きをお伝えする。

――最も早くて74日(アルメル・ルクレアク氏が樹立した大会の最速記録)、多くは100日はかかる、一人ぼっちの海上生活です。孤独はどうまぎらわせたのでしょう。

「孤独を感じたことはありません。

孤独かどうかを決めるのは自分です。レース中、海の上には、夢があり、希望があり、ライバルがいる。孤独になんて、なるわけがない。

なんでもある都会にいて、友達がいない、夢がない。これを孤独というんです。

孤独は都会が生み出す。自分で生み出しているのだと思います。

ヨットは自分で望んでやっていることで、誰にやらされているわけでも、やらなければいけない義務でもありません。

それに本当に命をかけてやっている時に、孤独なんて感じていられない。必死ですよ。

レース中はもう忙しくて、携帯電話さえ壊したいくらい。孤独になってみたいくらいです」

――全長18m、幅6m、時速30ノット(約74km)の「飛ぶ船(bateau volants)」と呼ばれる船の上、毎食どうされていたのですか。

「アルファ米とおかずはオイルサーディンの缶詰を持っていきました。ビタミン類はサプリメントです。

日本のお米を持っていくと、フランス人たちが“日本の米が一番うまい”って喜びます。

アルファ米は白米、ワカメご飯、ひじきが人気でした。意外にも好まれなかったのは、赤飯とカレー。僕にはおいしかったけどね。

ヴァンデのリゾート「サン・ジル・クロワ・ド・ヴィ」は、イワシの漁港地として有名で、缶詰工場もある。街のレストランでもおいしいイワシ料理がいろいろ食べられる、イワシで有名な地なんです。

だから地元で買ったオイルサーディンを、日本の米の上にのっけたオイルサーディン丼は間違いない。よく食べました。

でも普段はたいていカロリーメイトをかじるくらい。時間も決まっていません。料理もほぼできない。海の上は、なかなか忙しいんです」