続・城址碑や説明板をかっこよく撮るなら…構図、アングル、ライティングを工夫して「城としての空間」を写しとる

AI要約

城址碑や説明板のカッコよく撮影するための工夫について述べられている。土塁や曲輪を背景に取り入れた構図や、文書撮影モードの活用、ライティングの重要性などが説明されている。

石碑や説明板の撮影時の注意点や逆光対策、他の撮影アングルの探求、石碑の背後のストーリーや地元の愛情についても触れられている。

城址碑は文化財として尊重されるべきであり、適切に撮影することの重要性が強調されている。

 (歴史ライター:西股 総生)

●城址碑や説明板だってカッコよく撮りたい(前編)

■ 「城としての空間の広がり」を写しとる

 「碑ペロ」「板ペロ」写真から脱却するには、まず構図を何とかしたい。石碑や説明板は、土塁を背に立っていることがけっこう多い。であるなら、石碑・説明板の背後にある緑や茶色のカタマリが、土塁であるとわかるような構図にしてみよう。

 広場の真ん中にポツンと立っている場合でも、その広場が曲輪であることを表現できるように、アングルを工夫してみる。このサイトで少し前に、広角レンズを使って土の城を撮るコツや、中望遠レンズで城郭建築を撮る方法などを、解説したことがある。それらの記事が参考になるはずだ。

 要は「城としての空間の広がり」を写しとる工夫をするのだ。土塁も堀も何も残っていない城跡でも、「空間の広がり」が映り込めば、城らしさが感じられよう。市街地化の進んだ城跡なら、むしろ市街地の中に立っている様子を写しとった方が、無常感みたいなものが出てよいかもしれない。

 あるいは、説明板の板面を資料として記録するために撮ることも、あるだろう。それなら、資料として板面が読みやすいように撮ろう。土の城はズームを広角側にして撮っていることが多いと思うが、説明板を広角のまま撮ると、板面が上すぼまりになったり歪んだりして、読みにくい。ズームを標準~中望遠域にして、少し離れた位置から撮るとよい。 

 カメラによっては、シーン別撮影モードの中に「文書撮影モード」が入っている場合があるので、利用するとよい。「文書撮影モード」がない場合は絞りをF8にして、+0.3~0.7程度の露出補正をかけると、読みやすく撮れる。

 石碑の撮影でいちばん難しいのはライティングで、日の当たり方によって字がきれいに読めたり、読みにくかったりする。石碑に彫り込まれた文字は、真っ正面からベタに光が当たると読みにくく、斜めから光が差すとくっきり読める。こうしたケースでは、マイナス気味に露出補正をかけた方が、カッチリ撮れる。

 石碑が木陰にあったり、木漏れ日がマダラに差したりして、碑面が読みにくいというのも「城跡あるある」だ。そういう時は、とりあえず1枚押さえておいて、光線状態が変わるのを待つ。

 といっても、石碑の前でじっと光待ちをしているわかにもいかないから、主郭あたりを一回りしたら戻ってみるとか、城から出る前にもう一度、戻ってみるとよい。風が吹いているなら、数分待ってみるだけでも、さーっと光が差すタイミングが得られるものだ。

 一番の難敵は、完全に逆光になってしまうシチュエーションだ。逆光の場合、レンズに直接光が差し込むとゴーストやフレアを生じてしまう(ハレーション)。レンズフードの装着はマストとして、掌や手帳をかざして「ハレ切り」をしてみよう。

 それでもダメなら、アングルを変える。石碑の後ろ上方から太陽が差している場合でも、斜めから撮るアングルを探せば、逆光をかわせる。いずれにせよ、逆光の場合は露出補正をプラス側にかける。スポット測光で碑面の露出をとるのもよい。

 最後に一つ。石碑なんか、どこの城跡でも当たり前に立っていると思ったら、大間違いである。教育委員会などによる説明板や標柱なら、たいがいの城跡に立っている。でも、しっかりとした石碑となると、案外少ないものだ。立派な石碑を立てるには、資金と労力を要するからだ。だから、石碑の裏面には資金を供出した人の名や、建立の経緯などが彫り込まれているし、碑面の揮毫が意外な有名人であったりする。地元の人たちの郷土愛や熱意が結集しなければ、城址碑は立たないのだ。

 城址碑は、敬意をもって接すべき文化財なのである。であるなら城址碑だって、被写体としてカッコよく撮ってあげようではないか。