夏場にふらついて、派手に転んだ…実はそれ「血圧のクスリ」が原因かもしれません

AI要約

高齢者が夏場に注意すべき薬剤のリスクについて解説。

高血圧や利尿薬の飲み過ぎによる健康リスクがある。

血圧の薬や利尿薬の他にも、解熱鎮痛剤や胃腸薬などにも注意が必要。

夏場にふらついて、派手に転んだ…実はそれ「血圧のクスリ」が原因かもしれません

「7月が始まり暑さが本格化してきたころから、日中に目まいがしたり少しふらついたりすることが増えました。この前なんて自宅のリビングで急に目の前が暗くなって、派手に転んでしまったんです。

さいわい大事には至りませんでしたが、脚の骨を折ってそのまま寝たきりになっていたかもしれないと思うと、恐ろしいですね……」

都内に住む笹谷恵子さん(74歳・仮名)は、少し前の出来事をこう振り返る。心配になって大きな病院で検査した笹谷さんだが、それらしき原因は一向に見えてこない。さんざん調べてもらった末に浮かび上がってきたのが、いつも飲んでいる「血圧のクスリ」だった。

高血圧で悩む笹谷さんが飲んでいたのは、アジルサルタンという降圧剤。血圧を下げる効果が強いためよく使われるARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)の一種だが、逆にその強さが「仇」となったのだ。栃木医療センター臨床研究部長の加藤徹氏が解説する。

「気温が高くなると体内の熱を逃がそうと血管が拡張するため、一般的に夏は血圧が下がります。にもかかわらず同じ量の降圧剤を飲み続けていると、人によっては血圧が下がりすぎてしまい、目まいや転倒の原因にもなりかねません。

だから外来では一部の患者さんに対して、暑くなり始める時期からクスリの量を減らしたり種類を変えたりしています」

年々、酷暑が強まっている日本の夏。周囲の環境が大きく変わる季節には、外部からの影響を受ける人間の体調に変化が生じるのも当然だろう。それを見過ごして漫然と同じクスリを飲み続けていると、かえって健康を害しかねない。ほとんどの医者は教えてくれない「夏に怖い」クスリのリスクを紹介していこう。

降圧剤の中でもとりわけ注意すべきなのが、ラシックスやフルイトランなどの利尿薬だ。

「年齢を重ねると、体内の水分量は若いころの7~8割にまで減ると言われています。そのうえ夏場で汗の量が増えたところに強い利尿薬を飲むと、必要以上に水分を排出してしまい脱水症状につながる」(銀座薬局の薬剤師・長澤育弘氏)

レニベース、カプトリルなどのACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、あるいは冒頭で紹介したARBを飲んでいる人も、気を配っておきたい。

「これらの降圧剤は腎臓でのカリウム排泄を抑制するため、服用していると夏場に高カリウム血症を引き起こしやすい。これらを飲んだうえイモ類やカボチャなどカリウムが多量に含まれる野菜を食べすぎて、カリウム値が通常の2倍近くまで跳ね上がった患者さんもいました」(前出の加藤氏)

解熱鎮痛剤や胃腸薬、睡眠薬など、夏に注意すべきクスリはほかにも数多くある。引き続き、後編記事『ロキソニンに血圧のクスリ、胃腸薬も…実は「夏に怖いクスリ」を実名公開する』で紹介していこう。

「週刊現代」2024年7月13日号より